「あの」ハリーが言った。「バグマンさんは……」
「……あれ以来、一度も闇やみの活動で罪に問われたことはない」ダンブルドアは落ち着いた声で答えた。
「そうですね」ハリーは急いでそう言うと、また「憂いの篩」の中身を見つめた。ダンブルドアが「想い」を入れるのをやめたので、いまは渦うずがゆっくりと動いていた。
「それから……あの……」
「憂いの篩」がハリーの代わりに質問しているかのように、スネイプの顔が再び浮かんで揺ゆれた。ダンブルドアはそれを見下ろし、それから目を上げてハリーを見た。
「スネイプ先生も同じことじゃ」ダンブルドアが言った。
ハリーはダンブルドアの明るいブルーの瞳ひとみを見つめた。そして、本当に知りたかった疑問が、思わず口を衝ついて出てしまった。
「校長先生? 先生はどうして、スネイプ先生が本当にヴォルデモートに従うのをやめたのだと思われたのですか?」
ダンブルドアは、ハリーの食い入るような眼まな差ざしを、数秒間じっと受け止めていた。そしてこう言った。
「それはの、ハリー、スネイプ先生とわしとの問題じゃ」
ハリーはこれでダンブルドアとの話は終わりだと悟さとった。ダンブルドアは怒っているようには見えなかったが、そのきっぱりとした口調が、ハリーに、もう帰りなさいと言っていた。ハリーは立ち上がった。ダンブルドアも立ち上がった。
「ハリー」ハリーが扉とびらのところまで行くと、ダンブルドアが呼びかけた。「ネビルの両親のことは、誰にも明かすではないぞ。みんなにいつ話すかは、あの子が決めることじゃ。その時ときが来ればの」
「わかりました。先生」ハリーは立ち去ろうとした。
「それと――」
ハリーは振り返った。
ダンブルドアは「憂うれいの篩ふるい」を覗のぞき込むように立っていた。銀色の丸い光が下からダンブルドアの顔を照らし、これまでになく老け込んで見えた。ダンブルドアは一瞬いっしゅんハリーを見つめ、それからおもむろに言った。
「第三の課題じゃが、幸運を祈っておるぞ」