「それに、ファッジはマダム・マクシームがクラウチを襲おそったと考えたのかい?」
ロンがハリーのほうを向いた。
「うん。だけど、それは、クラウチがボーバトンの馬車のそばで消えたから、そう言っただけだよ」
「僕たちはマダムのことなんて、考えもしなかったよな?」ロンが考え込むように言った。「ただし、マダムは絶対に巨人の血が入ってる。あの人は認めたがらないけど――」
「そりゃそうよ」ハーマイオニーが目を上げて、きっぱり言った。「リータがハグリッドのお母さんのことを書いたとき、どうなったか知ってるでしょ。ファッジを見てよ。マダムが半巨人だからって、すぐにそんな結論に飛びつくなんて。偏へん見けんもいいとこじゃない? 本当のことを言った結果そんなことになるなら、私だってきっと『骨が太いだけだ』って言うわよ」
ハーマイオニーが腕時計を見た。
「まだ何にも練習してないわ!」ハーマイオニーは「ショック!」という顔をした。「『妨ぼう害がいの呪のろい』を練習するつもりだったのに! 明日は絶対にやるわよ! さあ、ハリー、少し寝ておかなきゃ」
ハリーとロンはのろのろと寝しん室しつへの階段を上がった。パジャマに着替えながら、ハリーはネビルのベッドを見た。ダンブルドアとの約束どおり、ハリーはロンにもハーマイオニーにもネビルの両親のことを話さなかった。メガネをはずし、四本柱のベッドに這はい登りながら、ハリーは、両親が生きていても子供である自分をわかってもらえなかったらどんな気持だろうと、思いやった。ハリーは知らない人から、孤こ児じでかわいそうだと同情されることがしばしばあるが、ネビルのほうがもっと同情されてもいいんだ。ネビルのいびきを聞きながら、ハリーはそう思った。ベッドに横になり、暗くら闇やみの中で、ハリーはロングボトム夫妻を拷ごう問もんした連中への怒りと憎にくしみがどっと押おし寄せてくるのを感じた……法ほう廷ていからクラウチの息子が、仲間と一いっ緒しょに吸きゅう魂こん鬼きに引きずられていくときの聴ちょう衆しゅうが罵ば倒とうする声をハリーは思い出していた……その気持がわかった……そして、蒼そう白はくになって泣き叫さけんでいた少年の顔を思い出した。あの少年が、あれから一年後には死んだのだと気づいて、ハリーはドキリとした……。
ヴォルデモートだ。暗闇の中で、ベッドの天てん蓋がいを見つめながら、ハリーは思った。すべてヴォルデモートのせいなのだ……家族をバラバラにし、いろいろな人生をメチャメチャにしたのは、ヴォルデモートなのだ……。