ロンとハーマイオニーは、期末試験の勉強をしなければならないはずだ。第三の課題が行われる日に試験が終わる予定だ。にもかかわらず、二人はハリーの準備を手伝うほうにほとんどの時間を費やしていた。
「心配しないで」ハリーがそのことを指し摘てきし、しばらくは自分一人で練習するからと言うと、ハーマイオニーがそう答えた。「少なくとも、『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』では、私たち、きっと最高点を取るわよ。授業じゃ、こんなにいろいろな呪じゅ文もんは絶対勉強できなかったわ」
「僕たち三人が『闇やみ祓ばらい』になるときのために、いい訓練さ」ロンは教室にブンブン迷い込んだスズメバチに「妨害の呪い」をかけ、空中でぴたりと動きを止めながら、興こう奮ふんしたように言った。
六月に入ると、ホグワーツ城にまたしても興奮と緊張きんちょうがみなぎった。学期が終わる一週間前に行われる第三の課題を、誰もが心待ちにしていた。ハリーは機会あるごとに「呪い」を練習していた。これまでの課題より、こんどの課題には自信があった。もちろん、今回も危険で難しいには違いないが、ムーディの言うとおり、ハリーにはこれまでの実績がある。いままでもハリーは、怪物や魔法の障害物を何とか乗り越えてきた。前もって知らされている分だけ、今回は準備するチャンスがある。
学校中いたるところでハリーたち三人にばったり出くわすのにうんざりしたマクゴナガル先生が、空あいている「変へん身しん術じゅつ」の教室を昼休みに使ってよろしいと、ハリーに許可を与えた。ハリーはまもなくいろいろな呪じゅ文もんを習得した。「妨ぼう害がいの呪のろい」は攻こう撃げきしてくる者の動きを鈍にぶらせ、妨害する術。「粉こな々ごな呪文」は硬かたいものを吹き飛ばして、通り道を空ける術。「四し方ほう位い呪じゅ文もん」はハーマイオニーが見つけてきた便利な術で、杖つえで北の方角を指させ、迷めい路ろの中で正しい方向に進んでいるかどうかをチェックすることができる。しかし、「盾たての呪じゅ文もん」はうまくできなかった。一時的に自分の周りに見えない壁かべを築き、弱い呪いなら跳ね返すことができるはずの呪文だが、ハーマイオニーは、見事に狙い定めた「くらげ足の呪い」で、見えない壁を粉々にした。ハーマイオニーが反対呪文を探している十分ぐらいの間、ハリーはくにゃくにゃする足で教室を歩き回る羽は目めになった。