「でも、なかなかいい線行ってるわよ」ハーマイオニーは、習得した呪文をリストの上で×印をつけて消しながら励ました。「このうちのどれかは必ず役に立つはずよ」
「あれ見ろよ」ロンが窓際に立って呼んだ。校庭を見下ろしている。「マルフォイのやつ、何やってるんだ?」
ハリーとハーマイオニーが見にいった。マルフォイ、クラッブ、ゴイルが校庭の木陰に立っていた。クラッブとゴイルは見張りに立っているようだ。二人ともニヤニヤしている。マルフォイは口のところに手をかざして、その手に向かって何かしゃべっていた。
「トランシーバーで話してるみたいだな」ハリーが変だなぁという顔をした。
「そんなはずないわ」ハーマイオニーが言った。「言ったでしょ。そんなものはホグワーツの中では通じないのよ。さあ、ハリー」
ハーマイオニーはきびきびとそう言い、窓から離れて教室の中央に戻った。
「もう一度やりましょ。『盾の呪文』」
シリウスはいまや、毎日のようにふくろう便をよこした。ハーマイオニーと同じように、ハリーはまず最後の課題をパスすることに集中し、それ以外は後回しにするように、という考えらしい。ハリーへの手紙に、ホグワーツの敷しき地ち外で起こっていることは何であれ、ハリーの責任ではないし、ハリーの力ではどうすることもできないのだからと、毎回書いてよこした。
ヴォルデモートが本当に再び力をつけてきているにせよ、わたしにとっては、君の安全を確保するのが第一だ。ダンブルドアの保護の下にあるかぎり、やつはとうてい君に手出しはできない。しかし、いずれにしても危険を冒おかさないように。迷めい路ろを安全に通過することだけに集中すること。ほかのことは、そのあとで気にすればよい。
六月二十四日が近づくにつれ、ハリーは神経が昂たかぶってきた。しかし、第一と第二の課題のときほどひどくはなかった。一つには、今回はできるかぎりの準備はした、という自信があった。もう一つには、これが最後のハードルだからだ。うまくいこうがいくまいが、ようやく試合は終わる。そうしたらどんなにほっとすることか。