「見せてよ」ハリーがロンに言った。「貸して」
ロンはしぶしぶ新聞を渡した。ハリーが開いてみると、大見出しの下で、自分の写真がこっちを見つめていた。
ハリー・ポッターの「危険な奇き行こう」
「名前を言ってはいけないあの人」を破ったあの少年が、情じょう緒ちょ不安定、もしくは危険な状態にある。と本紙の特とく派は員いん、リータ・スキーターが書いている。
ハリー・ポッターの奇き行こうに関する驚くべき証しょう拠こが最近明るみに出た。三さん校こう対たい校こう試じ合あいのような過か酷こくな試合に出ることの是非が問われるばかりか、ホグワーツに在ざい籍せきすること自体が疑問視されている。
本紙の独占情報によれば、ポッターは学校で頻ひん繁ぱんに失しっ神しんし、額ひたいの傷きず痕あと(「例のあの人」がハリー・ポッターを殺そうとした呪のろいの遺い物ぶつ)の痛みを訴えることもしばしばだという。去る月曜日、「占うらない学がく」の授業中、ポッターが、傷痕の痛みが堪たえがたく、授業を続けることができないと言って、教室から飛び出していくのを本紙記者が目もく撃げきした。
聖せいマンゴ魔ま法ほう疾しっ患かん傷しょう害がい病びょう院いんの最高権けん威いの専門医たちによれば、「例のあの人」に襲おそわれた傷が、ポッターの脳に影響を与えている可能性があると言う。また、傷がまだ痛むというポッターの主張は、根深い錯さく乱らん状態の表れである可能性があると言う。
「痛いふりをしているかもしれませんね」専門医の一人が語った。「気を引きたいという願望の表れであるかもしれません」
日刊予言者新聞は、ホグワーツ校の校長、アルバス・ダンブルドアが魔法社会からひた隠しにしてきた、ハリー・ポッターに関する憂ゆう慮りょすべき事実をつかんだ。
「ポッターは蛇へび語ごを話せます」ホグワーツ校四年生の、ドラコ・マルフォイが明かした。「二、三年前、生徒が大勢襲おそわれました。『決けっ闘とうクラブ』で、ポッターが癇癪かんしゃくを起こし、ほかの男子学生に蛇をけしかけてからは、ほとんどみんなが、事件の裏にポッターがいると考えていました。でも、すべては揉もみ消されたのです。しかし、ポッターは狼おおかみ人にん間げんや巨人とも交友があります。少しでも権力を得るためには、あいつは何でもやると思います」
蛇語とは、蛇と話す能力のことで、これまでずっと、闇やみの魔ま術じゅつの一つと考えられてきた。現代の最も有名な蛇語使いは、誰あろう、「例のあの人」その人である。匿とく名めい希望の「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ連れん盟めい」の会員は、蛇語を話すものは、誰であれ、「尋じん問もんする価値がある」と語った。「個人的には、蛇と会話することができるような者は、みんな非常に怪しいと思いますね。なにしろ、蛇というのは、闇の魔術の中でも最悪の術に使われることが多いですし、歴史的にも邪じゃ悪あくな者たちとの関連性がありますからね」また、「狼人間や巨人など、邪悪な生き物との親交を求めるようなやつは、暴力を好む傾向があるように思えますね」とも語った。
アルバス・ダンブルドアはこのような少年に三校対抗試合への出場を許すべきかどうか、当然考慮すべきであろう。試合に是が非でも勝ちたいばかりに、ポッターが闇の魔術を使うのではないかと恐れる者もいる。その試合の第三の課題は今夕行われる。
「僕にちょっと愛あい想そが尽きたみたいだね」ハリーは新聞を畳たたみながら、気軽に言った。