「おい!」後ろからロンが呼びかけた。「あと十分で『魔ま法ほう史し』の試験だぞ! おったまげー」
ロンがハリーを振り返った。
「試験に遅れるかもしれないのに行くなんて、よっぽどあのスキーターのやつを嫌ってるんだな。君、ビンズの授業でどうやって時間をつぶすつもりだ?――また読書か?」
対たい校こう試じ合あいの代表選手は期末試験を免除されていたので、ハリーはこれまで、試験の時間には教室のいちばん後ろに座り、第三の課題のために新しい呪じゅ文もんを探していた。
「だろうな」ハリーが答えた。ちょうどそのとき、マクゴナガル先生がグリフィンドールのテーブル沿いに、ハリーに近づいてきた。
「ポッター、代表選手は朝食後に大広間の脇わきの小部屋に集合です」先生が言った。
「でも、競きょう技ぎは今夜です!」時間を間違えたのではないかと不安になり、ハリーは炒いり卵をうっかりローブにこぼしてしまった。
「わかっています。ポッター」マクゴナガル先生が言った。「いいですか、代表選手の家族が招待しょうたいされて最終課題の観戦に来ています。みなさんにご挨あい拶さつする機会だというだけです」
マクゴナガル先生が立ち去り、ハリーはその後ろで唖あ然ぜんとしていた。
「まさか、マクゴナガル先生、ダーズリーたちが来ると思っているんじゃないだろうな?」
ハリーがロンに向かって呆ぼう然ぜんと問いかけた。
「さあ」ロンが言った。「ハリー、僕、急がなくちゃ。ビンズのに遅れちゃう。あとでな」
ほとんど人がいなくなった大おお広ひろ間まで、ハリーは朝食をすませた。フラー・デラクールがレイブンクローのテーブルから立ち上がり、大広間から脇わきの小部屋に向かっているセドリックと一いっ緒しょに部屋に入った。クラムもすぐあとに前まえ屈かがみになって入っていった。ハリーは動かなかった。やはり小部屋に入りたくなかった。家族なんていない――少なくとも、ハリーが命を危険にさらして戦うのを見にきてくれる家族はいない。しかし、図書室にでも行ってもうちょっと呪じゅ文もんの復習をしようかと立ち上がりかけたそのとき、小部屋のドアが開いて、セドリックが顔を突き出した。