バグマンがピッと笛を鳴らした。ハリーとセドリックが急いで迷めい路ろに入った。
聳そびえるような生いけ垣がきが、通路に黒い影を落としていた。高く分厚い生垣のせいか、魔法がかけられているからなのか、いったん迷路に入ると、周りの観衆の音はまったく聞こえなくなった。ハリーはまた水の中にいるような気がしたほどだ。杖つえを取り出し、「ルーモス! 光よ!」と呟つぶやくと、セドリックもハリーの後ろで同じことを呟いているのが聞こえてきた。
五十メートルも進むと、分かれ道に出た。二人は顔を見合わせた。
「じゃあね」ハリーはそう言うと左の道に入った。セドリックは右を採った。
ハリーは、バグマンが二度目のホイッスルを鳴らす音を聞いた。クラムが迷路に入ったのだ。ハリーは速度を上げた。ハリーの選んだ道には、まったく何もいないようだった。右に曲がり、急ぎ足で、杖を頭上に高く掲かかげ、なるべく先のほうが見えるようにして歩いた。しかし、見えるものは何もない。
遠くで、バグマンのホイッスルが鳴った。これで代表選手全員が迷路に入ったことになる。
ハリーはしょっちゅう後ろを振り返った。またしても誰かに見られているような、あの感覚に襲おそわれていた。空がだんだん群ぐん青じょう色いろになり、迷路は刻こく一いっ刻こくと暗くなってきた。ハリーは二つ目の分かれ道に出た。
「方角示せ!」ハリーは杖を手のひらに平らに載のせて呟つぶやいた。
杖はくるりと一回転し、右を示した。そこは生垣が密みっ生せいしている。そっちが北だ。迷路の中心に行くには、北西の方角に進む必要があるということはわかっている。いちばんよいのは、ここで左の道を行き、なるべく早く右に折れることだ。