ハリーは左の道を採った。行き止まりだった。右の道もまたそうだった。心臓をドキドキさせながら、ハリーは自分自身を押し止とどめ、もう一度「四し方ほう位い呪じゅ文もん」を使った。そして元来た道を戻り、北西に向かう道を選んだ。
新しい道を急ぎ足で数分歩いたとき、その道と平行に走る道で何かが聞こえ、ハリーはぴたりと足を止めた。
「何をする気だ?」セドリックが叫んでいる。「いったい何をする気なんだ?」
それからクラムの声が聞こえた。
「クルーシオ! 苦しめ!」
突然、セドリックの悲ひ鳴めいがあたりに響ひびき渡った。ハリーはぞっとした。何とかセドリックのほうに行く道を見つけようと、前方に向かって走った。しかし、見つからない。ハリーはもう一度「粉こな々ごな呪じゅ文もん」を使った。あまり効き目はなかったが、それでも生いけ垣がきに小さな焼け焦げ穴が開いた。ハリーはそこに足を突っ込み、うっそうと絡からみ合った茨いばらや小枝を蹴けって、その穴を大きくした。ローブが破れたが、無理やりその穴を通り抜け、右側を見ると、セドリックが地面でのた打ち回っていた。クラムが覆おおいかぶさるように立っている。
ハリーは体たい勢せいを立て直し、クラムに杖つえを向けた。そのときクラムが目を上げ、背を向けて走り出した。
「ステューピファイ! 麻ま痺ひせよ!」ハリーが叫んだ。
呪文はクラムの背中に当たった。クラムはその場でぴたりと止まり、芝しば生ふの上にうつ伏せに倒れ、ピクリとも動かなくなった。ハリーはセドリックのところへ駆かけつけた。もう痙けい攣れんは止まっていたが、両手で顔を覆い、ハァハァ息を弾はずませながら横たわっていた。
「大丈夫か?」ハリーはセドリックの腕をつかみ、大声で聞いた。
「ああ」セドリックが喘あえぎながら言った。