ハリーは「四し方ほう位い呪じゅ文もん」を使って、正しい方向を確かめながら進んだ。勝負はハリーかセドリックに絞しぼられた。優ゆう勝しょう杯はいに先にたどり着きたいという思いが、いままでになく強く燃え上がった。しかし、ハリーはたったいま目もく撃げきしたクラムの行動が信じられなかった。「許ゆるされざる呪じゅ文もん」を同類であるヒトに使うことは、アズカバンでの終身刑に値すると、ムーディに教わった。クラムはそこまでして三さん校こう対たい抗こう優勝杯がほしいと思うはずがない……ハリーは足を速めた。
ときどき袋小路にぶつかったが、だんだん闇やみが濃こくなることから、ハリーは迷めい路ろの中心に近づいているとはっきり感じた。長いまっすぐな道を、ハリーは勢いよくずんずん歩いた。すると、また何か蠢うごめくものが見えた。杖つえ灯あかりに照らし出されたのは、とてつもない生き物だった。「怪かい物ぶつ的てきな怪物の本」で、絵だけでしか見たことのない生き物だ。
スフィンクスだ。巨大なライオンの胴体、見事な爪つめを持つ四し肢し、長い黄色味を帯びた尾の先は茶色の房になっている。しかし、頭部は女性だった。ハリーが近づくと、スフィンクスは切れ長のアーモンド形の目を向けた。ハリーは戸と惑まどいながら杖を上げた。スフィンクスは伏せて飛びかかろうという姿勢ではなく、左右に往いったり来たりしてハリーの行く手を塞ふさいでいた。
スフィンクスが、深いしわがれた声で話しかけた。
「おまえはゴールのすぐ近くにいる。いちばんの近道はわたしを通り越していく道だ」
「それじゃ……それじゃ、どうか、道を空あけてくれませんか?」答えはわかっていたが、それでもハリーは言ってみた。
「だめだ」スフィンクスは往いったり来たりをやめない。「通りたければ、わたしの謎なぞ々なぞに答えるのだ。一度で正しく答えれば――通してあげよう。答えを間違えば――おまえを襲おそう。黙もくして答えなければ――わたしのところから返してあげよう。無む傷きずで」
ハリーは胃袋がガクガクと数段落ち込むような気がした。こういうのが得意なのはハーマイオニーだ。僕じゃない。ハリーは勝算を計った。謎が難しければ黙だまっていよう。無傷で帰れる。そして、中心部への別なルートを探そう。