「了解」ハリーが言った。「謎々を出してくれますか?」
スフィンクスは道の真ん中で、後脚を折って座り、謎をかけた。
最初のヒント。変へん装そうして生きる人だれだ
秘ひ密みつの取引、嘘うそばかりつく人だれだ
二つ目のヒント。だれでもはじめに持っていて、
途と中ちゅうにまだまだ持っていて、何だの最後は何だ?
最後のヒントはただの音。言葉探しに苦労して、
よく出す音は何の音
つないでごらん。答えてごらん。
キスしたくない生き物は何だ?
ハリーは、口をあんぐり開けてスフィンクスを見た。
「もう一度言ってくれる?……もっとゆっくり」ハリーはおずおずと頼んだ。
スフィンクスはハリーを見て瞬まばたきし、微ほほ笑えんで、謎々を繰り返した。
「全部のヒントを集めると、キスしたくない生き物の名前になるんだね?」ハリーが聞いた。
スフィンクスはただ謎めいた微笑を見せただけだった。ハリーはそれを「イエス」だと取った。ハリーは知恵を絞しぼった。キスしたくない動物ならたくさんいる。すぐに「尻しっ尾ぽ爆ばく発はつスクリュート」を思いついたが、これが答えではないと、何となくわかった。ヒントを解かなければならないはずだ……。
「変装した人」ハリーはスフィンクスを見つめながら呟つぶやいた。「嘘をつく人……アー……それは――ペテン師。違うよ、まだこれが答えじゃないよ! アー――スパイ? あとでもう一回考えよう……二つ目のヒントをもう一回言ってもらえますか?」
スフィンクスは謎々なぞなぞの二つ目のヒントを繰り返した。
「誰でもはじめに持っていて」ハリーは繰り返した。「アー……わかんない……途中にまだまだ持っていて……最後のヒントをもう一度?」
スフィンクスが最後の四行を繰り返した。
「ただの音。言葉探しに苦労して」ハリーは繰り返した。「アー……それは……アー……待てよ――『アー』! 『アー』っていう音だ!」
スフィンクスはハリーに微ほほ笑えんだ。
「スパイ……アー……スパイ……アー……」ハリーも左右に往いったり来たりしていた。「キスしたくない生き物……スパイダァー! 蜘く蛛もだ!」
スフィンクスは前よりもっとニッコリして、立ち上がり、前脚をグーンと伸ばし、脇わきに避よけてハリーに道を空あけた。
「ありがとう!」ハリーは自分の頭が冴さえているのに感心しながら全速力で先に進んだ。