もうすぐそこに違いない。そうに違いない……杖つえの方位が、この道はぴったり合っていることを示している。何か恐ろしい物にさえ出会わなければ、勝つチャンスはある……。
分かれ道に出た。道を選ばなければならない。
「方角示せ!」ハリーがまた杖に囁ささやくと、杖はくるりと回って右手の道を示した。ハリーがその道を大急ぎで進むと、前方に明かりが見えた。
三さん校こう対たい抗こう試合じあい優ゆう勝しょう杯はいが百メートルほど先の台座で輝かがやいている。ハリーが駆かけ出したそのとき、黒い影がハリーの行く手に飛び出した。セドリックが、優勝杯目指して全速力で走っていた。セドリックが先にあそこに着くだろう。ハリーは絶対に追いつけるはずがない。セドリックのほうがずっと背が高いし、足も長い――。
そのときハリーは、何か巨大なものが、左手の生いけ垣がきの上にいるのを見つけた。ハリーの行く手と交差する道に沿って、急速に動いている。あまりにも速い。このままではセドリックが衝突しょうとつする。セドリックは優勝杯だけを見ているので、それに気づいていない――。
「セドリック!」ハリーが叫さけんだ。「左を見て!」
セドリックが左のほうを見、間かん一いっ髪ぱつで身を翻ひるがえし、衝突を避さけた。しかし、慌あわてて足がもつれ、転んだ。ハリーはセドリックの杖が手を離れて飛ぶのを見た。同時に、巨大な蜘蛛が行く手の道に現れ、セドリックにのしかかろうとした。
「ステューピファイ! 麻ま痺ひせよ!」ハリーが叫んだ。呪じゅ文もんは毛むくじゃらの黒い巨体を直撃ちょくげきしたが、せいぜい小石を投げつけたくらいの効果しかなかった。蜘蛛はぐいと身を引き、ガサガサと向きを変えて、こんどはハリーに向かってきた。
「ステューピファイ! 麻痺せよ! インペディメンタ! 妨ぼう害がいせよ! 麻痺せよ!」
何の効き目もない――蜘蛛が大きすぎるせいか、魔力が強いせいか、呪文をかけても蜘蛛を怒らせるばかりだ――。ギラギラした恐ろしい八つの黒い目と、剃かみ刀そりのようなハサミがちらりと見えた次の瞬間しゅんかん、蜘く蛛もはハリーに覆おおいかぶさっていた。