ハリーは蜘蛛の前脚に挟はさまれ、宙吊りになってもがいていた。蜘蛛を蹴け飛とばそうとして片足がハサミに触ふれた瞬間、ハリーは激痛に襲おそわれた――セドリックが「麻ま痺ひせよ!」と叫さけんでいるのが聞こえたが、ハリーの呪じゅ文もんと同じく、効き目はなかった――蜘蛛がハサミをもう一度開いたとき、ハリーは杖つえを上げて叫んだ。
「エクスペリアームス! 武器よ去れ!」
効いた――「武ぶ装そう解かい除じょ呪じゅ文もん」で蜘蛛はハリーを取り落とした。その代わり、ハリーは四メートルの高みより、足から先に落下した。体の下で、すでに傷きずついていた足が、ぐにゃりとつぶれた。考える間もなく、ハリーは、スクリュートのときと同じように、蜘蛛の下腹部めがけて杖を高く構え、叫んだ。
「ステューピファイ! 麻痺せよ!」同時にセドリックも同じ呪文を叫んだ。
一つの呪文ではできなかったことが、二つ呪文が重なることで効果を上げた――蜘蛛は横倒しになり、そばの生いけ垣がきを押しつぶし、もつれた毛むくじゃらの脚を道に投げ出していた。
「ハリー!」セドリックの叫ぶ声が聞こえた。「大丈夫か? 蜘蛛の下した敷じきか?」
「いいや」ハリーが喘あえぎながら答えた。足を見ると、おびただしい出血だ。破れたローブに、蜘蛛のハサミのべっとりとした糊のりのような分ぶん泌ぴつ物ぶつがこびりついているのが見えた。立とうとしたが、片足がぐらぐらして体の重みを支えきれなかった。ハリーは生垣に寄り掛かかって、喘あえぎながら周りを見た。
セドリックが三さん校こう対たい抗こう優ゆう勝しょう杯はいのすぐそばに立っていた。優勝杯はその背はい後ごで輝かがやいている。
「さあ、それを取れよ」ハリーが息を切らしながらセドリックに言った。「さあ、取れよ。君が先に着いたんだから」
しかし、セドリックは動かなかった。ただそこに立ってハリーを見ている。それから振り返って優勝杯を見た。金色の光に浮かんだセドリックの顔が、どんなにほしいかを語っている。セドリックはもう一度こちらを振り向き、生垣で体を支えているハリーを見た。
セドリックは深く息を吸った。