「君が取れよ。君が優勝するべきだ。迷めい路ろの中で、君は僕を二度も救ってくれた」
「そういうルールじゃない」ハリーはそう言いながら腹が立った。足がひどく痛む。蜘蛛を振り払おうと戦って、体中がズキズキする。こんなに努力したのに、セドリックが僕より一足早かった。チョウをダンスパーティに誘ったときにハリーを出し抜いたと同じだ。
「優勝杯に先に到着とうちゃくした者が得点するんだ。君だ。僕、こんな足じゃ、どんなに走ったって勝てっこない」
セドリックは首を振りながら、優勝杯から離れ、「失神」させられている大蜘蛛のほうに二、三歩近づいた。
「できない」
「かっこつけるな」ハリーは焦じれったそうに言った。「取れよ。そして二人ともここから出るんだ」
セドリックは生いけ垣がきにしがみついてやっと体を支えているハリーをじっと見た。
「君はドラゴンのことを教えてくれた」セドリックが言った。「あのとき前もって知らなかったら、僕は第一の課題でもう落らく伍ごしていたろう」
「あれは、僕も人に助けてもらったんだ」ハリーは血だらけの足をローブで拭ぬぐおうとしながら、素そっ気けなく言った。「君も卵のことで助けてくれた――あいこだよ」
「卵のことは、僕もはじめから人に助けてもらったんだ」
「それでもあいこだ」
ハリーはそーっと足を試しながら言った。体重をその足にかけると、ぐらぐらした。蜘く蛛もに取り落とされたときに挫くじいてしまったのだ。
「第二の課題のとき、君はもっと高い点を取るべきだった」セドリックは頑固だった。「君は人質全員が助かるようにあとに残った。僕もそうするべきだった」
「僕だけがバカだから、あの歌を本気にしたんだ!」ハリーは苦にが々にがしげに言った。「いいから優ゆう勝しょう杯はいを取れよ!」
「できない」セドリックが言った。
セドリックはもつれた蜘蛛の脚を跨またいでハリーのところにやってきた。ハリーはまじまじとセドリックを見つめた。セドリックは本気なんだ。ハッフルパフがこの何百年間も手にしたことのないような栄光から身を引こうとしている。