暗がりでじっと目を凝こらすと、墓石の間を、間違いなくこちらに近づいてくる人影がある。顔までは見分けられなかったが、歩き方や腕の組み方から、何かを抱えていることだけはわかった。誰かはわからないが、小こ柄がらで、フードつきのマントをすっぽりかぶって顔を隠している。そして――その姿がさらに数歩近づき、二人との距離がいちだんと狭せばまってきたとき――ハリーにはその影が抱えているものが、赤ん坊のように見えた……それとも単にローブを丸めただけのものだろうか?
ハリーは杖を少し下ろし、横目でセドリックをちらりと見た。セドリックもハリーに訝いぶかしげな視し線せんを返した。そして二人とも近づく影に目を戻した。
その影は、二人からわずか二メートルほど先の、丈たけ高だかの大だい理り石せきの墓石のそばで止まった。一いっ瞬しゅん、ハリー、セドリック、そしてその小柄な姿が互いに見つめ合った。
そのとき、何の前触れもなしに、ハリーの傷きず痕あとに激痛が走った。これまで一度も感じたことがないような苦痛だった。両手で顔を覆おおったハリーの指の間から、杖が滑すべり落ち、ハリーはがっくり膝ひざを折った。地面に座り込み、痛みでまったく何も見えず、いまにも頭が割れそうだった。
ハリーの頭の上で、どこか遠くのほうから聞こえるような甲かん高だかい冷たい声がした。
「よけいな奴は殺せ!」シュッという音とともに、もう一つ別の甲高い声が夜の闇やみを劈つんざいた。
「アバダ ケダブラ!」
緑の閃せん光こうがハリーの閉じた瞼まぶたの裏で光った。何か重いものがハリーの脇わきの地面に倒れる音がした。あまりの傷きず痕あとの痛さに吐はき気がした。そのときふと痛みが薄うすらいだ。何が見えるかを思うと目を開けることさえ恐ろしかったが、ハリーはジンジン痛む目を開けた。
セドリックがハリーの足あし下もとに大の字に倒れていた。死んでいる。