一瞬いっしゅんが永遠に感じられた。ハリーはセドリックの顔を見つめた。虚うつろに見開かれた、廃はい屋おくの窓ガラスのように無表情なセドリックの灰色の目を。少し驚いたように半開きになったセドリックの口元を。信じられなかった。受け入れられなかった。信じられないという思いのほかは、感覚が麻ま卑ひしていた。誰かが自分を引きずっていく。
フードをかぶった小こ柄がらな男が、手にした包みを下に置き、杖つえ灯あかりを点つけ、ハリーを大だい理り石せきの墓石のほうに引きずっていった。
杖灯りにチラリと照らし出された墓ぼ碑ひ銘めいを目にした。そのとたん、ハリーは無理やり後ろ向きにされ、背中をその墓石に押しつけられた。
トム・リドル
フードの男はこんどは杖から頑丈な縄なわを出し、ハリーを首から足首まで墓石にぐるぐる巻きに縛しばりつけはじめた。ハッハッと、浅く荒い息いき遣づかいがフードの奥から聞こえた。ハリーは抵てい抗こうし、男がハリーを殴なぐった――男の手は指が一本欠けている。そのときハリーはフードの下の男が誰なのかがわかった。ワームテールだ。
「おまえだったのか!」ハリーは絶句した。
しかし、ワームテールは答えなかった。縄を巻きつけ終わると、縄目の堅かたさを確かめるのに余よ念ねんがなかった。結び目をあちこち不器用に触さわりながら、ワームテールの指は止めようもなく小刻みに震ふるえていた。ハリーが墓石にしっかり縛りつけられ、びくともできない状態だと確かめると、ワームテールはマントから黒い布を一握り取り出し、乱暴にハリーの口に押し込んだ。それから、一言も言わず、ハリーに背を向け、急いで立ち去った。ハリーは声も出せず、ワームテールがどこへ行ったのかを見ることもできなかった。墓石の裏を見ようとしても、首が回せない。ハリーは真正面しか見ることができなかった。