ハリーの額ひたいの傷きず痕あとがまたしても焼けるように鋭するどく痛んだ。ワームテールがまた新たに叫さけび声を上げた。ヴォルデモートがワームテールの腕の印から指を離すと、その印が真っ黒に変わっているのをハリーは見た。
ヴォルデモートは残忍な満足の表情を浮かべて立ち上がり、頭をぐいとのけ反らせると、暗い墓場をひとわたり眺ながめ回した。
「それを感じたとき、戻る勇気のあるものが何人いるか」ヴォルデモートは赤い目をギラつかせて星を見み据すえながら呟つぶやいた。「そして、離れようとする愚か者が何人いるか」
ヴォルデモートはハリーとワームテールの前を、往いったり来たりしはじめた。その目はずっと墓場を見渡し続けている。一、二分たったころ、ヴォルデモートは再びハリーを見下ろした。蛇へびのような顔が残忍な笑いに歪ゆがんだ。
「ハリー・ポッター、おまえは、俺おれ様さまの父の遺い骸がいの上におるのだ」ヴォルデモートが歯を食いしばったまま、低い声で言った。「マグルの愚か者よ……ちょうどおまえの母親のように。しかし、どちらも使い道はあったわけだな? おまえの母親は子供を守って死んだ……俺様は父親を殺した。死んだ父親がどんなに役立ったか、見たとおりだ……」
ヴォルデモートがまた笑った。往ったり来たりしながら、ヴォルデモートはあたりを見回し、蛇へびは相変わらず草地に円を描いて這はいずっていた。
「丘の上の館が見えるか、ポッター? 俺様の父親はあそこに住んでいた。母親はこの村に住む魔女で、父親と恋に落ちた。しかし、正体を打ち明けたとき、父は母を捨てた……父は、俺様の父親は、魔法を嫌っていた……」
「やつは母を捨て、マグルの両親の元に戻った。俺様が生まれる前のことだ、ポッター。そして母は、俺様を産むと死んだ。残された俺様は、マグルの孤こ児じ院いんで育った……しかし、俺様はやつを見つけると誓った……復讐ふくしゅうしてやった。俺様に自分の名を与えた、あの愚か者に……トム・リドル……」
ヴォルデモートは、墓から墓へとすばやく目を走らせながら、歩き回り続けていた。
「俺様が家族の歴史を物語るとは……」ヴォルデモートが低い声で言った。「なんと俺様も感かん傷しょう的てきになったものよ……しかし見ろ、ポッター! 俺様の真の家族が戻ってきた……」