「そして、自答するのだ」ヴォルデモートが囁ささやくように言った。「おまえたちは俺様が敗れたと信じたのに違いない。いなくなったと思ったのだろう。おまえたちは俺様の敵の間にするりと立ち戻り、無罪を、無知を、そして呪じゅ縛ばくされていたことを申し立てたのだ……」
「それなれば、と俺様は自問する。なぜおまえたちは、俺様が再び立つとは思わなかったのか? 俺様がとっくの昔に、死から身を護る手段を講じていたと知っているおまえたちが、なぜ? 生ける魔法使いの誰よりも、俺様の力が強かったとき、その絶大なる力の証あかしを見てきたおまえたちが、なぜ?」
「そして俺様は自ら答える。たぶんおまえたちは、より偉大な力が――ヴォルデモート卿きょうをさえ打ち負かす力が存在するのではないかと信じたのであろう……たぶんおまえたちは、いまやほかの者に忠誠を尽くしているのだろう……たぶんあの凡人の、穢けがれた血の、そしてマグルの味方、アルバス・ダンブルドアにか?」
ダンブルドアの名が出ると、輪になった死し喰くい人びとたちが動どう揺ようし、あるものは頭かぶりを振り、ブツブツ呟つぶやいた。ヴォルデモートは無む視しした。
「俺様は失望した……失望させられたと告白する……」
一人の死喰い人が突然、輪を崩くずして前に飛び出した。頭から爪つま先さきまで震えながら、その死喰い人はヴォルデモートの足あし下もとにひれ伏した。
「ご主人様!」死喰い人が悲ひ鳴めいのような声を上げた。「ご主人様、お許しを! われわれ全員をお許しください!」
ヴォルデモートが笑い出した。そして杖つえを上げた。
「クルーシオ! 苦しめ!」その死喰い人は地面をのたうって悲鳴を上げた。ハリーはその声が周囲の家まで聞こえるに違いないと思った……警察が来るといい。ハリーは必死に願った……誰でもいい……何でもいいから……。