ワームテールは立ち上がり、顔に涙の跡を光らせ、新しい力強い手を見つめながら輪わの中に入った。ヴォルデモートは、こんどはワームテールの右側の男に近づいた。
「ルシウス、抜け目のない友よ」男の前で立ち止まったヴォルデモートが囁ささやいた。
「世間的には立派な体面を保ちながら、おまえは昔のやり方を捨すててはいないと聞き及ぶ。いまでも先頭に立って、マグルいじめを楽しんでいるようだが? しかしルシウス、おまえは一度たりとも俺様を探そうとはしなかった……クィディッチ・ワールドカップでのおまえの企みは、さぞかしおもしろかっただろうな……しかし、そのエネルギーを、おまえのご主人様を探し、助けるほうに向けたほうがよかったのではないのか?」
「我わが君、私わたくしは常に準備しておりました」フードの下からルシウス・マルフォイの声が、すばやく答えた。「あなた様の何らかの印があれば、あなた様のご消息がちらとでも耳に入れば、私わたくしはすぐにお側に馳はせ参じるつもりでございました。何物も、私わたくしを止とどめることはできなかったでしょう――」
「それなのに、おまえは、この夏、忠実なる死し喰くい人びとが空に打ち上げた俺おれ様さまの印を見て、逃げたと言うのか?」ヴォルデモートは気だるそうに言った。マルフォイ氏は突然口をつぐんだ。「そうだ。ルシウスよ、俺様はすべてを知っているぞ……おまえには失望した……これからはもっと忠実に仕えてもらうぞ」
「もちろんでございます、我わが君、もちろんですとも……お慈じ悲ひを感かん謝しゃいたします……」
ヴォルデモートは先へと進み、マルフォイの隣となりに空あいている空間を――優ゆうに二人分の大きな空間を――立ち止まってじっと見つめた。
「レストレンジたちがここに立つはずだった」ヴォルデモートが静かに言った。
「しかし、あの二人はアズカバンに葬ほうむられている。忠実な者たちだった。俺様を見捨てるよりはアズカバン行きを選んだ……アズカバンが開放されたときには、レストレンジたちは最高の栄えい誉よを受けるであろう。吸きゅう魂こん鬼きも我々に味方するであろう……あの者たちは、生せい来らい我らが仲間なのだ……追放された巨人たちも呼び戻そう……忠実なる下しも僕べたちのすべてを、そして誰もが震しん撼かんする生き物たちを、俺様の下に帰らせようぞ……」