「下しも僕べは、俺様がその体を離れたときに死んだ。そして俺様は、またしても元のように弱くなった」ヴォルデモートは語り続けた。「俺様は、元の隠れ家に戻った。二度と力を取り戻せないのではないかと恐れたことを隠しはすまい……そうだ。あれは俺様の最悪のときであったかもしれぬ……もはや取り憑くべき魔法使いが都合よく現れるとは思えなかった……我が死喰い人たちの誰かが、俺様の消息を気にかけるであろうという望みを、そのとき、俺様はもう捨てていた……」
輪わの中の仮面の魔法使いが、一人二人、ばつが悪そうにモゾモゾしたが、ヴォルデモートは気にも止めない。
「そして、ほとんど望みを失いかけたとき、ついに事は起こった。そのときからまだ一年とたっていないのだが……一人の下しも僕べが戻ってきた。ここにいるワームテールだ。この男は、法の裁さばきを逃のがれるため、自みずからの死を偽ぎ装そうしたが、かつては友として親しんだ者たちから隠れ家を追われ、ご主人様の下もとに帰ろうと決心したのだ。俺おれ様さまが隠れていると長年噂うわさされていた国で、ワームテールは俺様を探した……もちろん途と中ちゅうで出会った鼠ねずみに助けられたのだ。ワームテールよ、貴き様さまは鼠と妙に親密なのだな? こやつの薄汚うすぎたない友人たちが、アルバニアの森の奥深くに、鼠も避さける場所があると、こやつに教えたのだ。やつらのような小動物が暗い影に取り憑つかれて死んでゆく場所があるとな……」
「しかし、こやつが俺様の下に戻る旅はたやすいものではなかった。そうだな? ワームテールよ。ある晩、俺様を見つけられるかと期待していた森のはずれで、腹をすかせ、こやつは愚かにも、食べ物ほしさにある旅籠はたごに立ち寄った……そこで出会ったのは、こともあろうに、魔ま法省ほうしょうの魔女、バーサ・ジョーキンズだ。そうだったな?」
「さて、運命が、ヴォルデモート卿きょうにどのように幸いしたかだ。ワームテールにとっては、ここで見つかったのは運の尽き、そして俺様にとっては、蘇よみがえりの最後の望みを断たれるところだった。しかし、ワームテールは、こやつにそんな才覚があったかと思わせるような機転を働かせた――こやつはバーサ・ジョーキンズを丸め込んで夜の散歩に誘い出し、バーサを捻ねじ伏ふせた……その女を俺様のもとへ連れてきたのだ。そして、すべてを破は滅めつさせるかもしれなかったバーサ・ジョーキンズが、逆に俺様にとって思いもかけない贈り物となってくれた……というのは――ほんのわずか説得しただけで――この女はまさに情報の宝庫になってくれた」