「何事かね? 何が起こったのかね?」
コーネリウス・ファッジの顔が、逆さまになって、ハリーの上に現れた。愕がく然ぜんとして蒼そう白はくだった。
「何たることだ――ディゴリー!」ファッジの顔が囁いた。
「ダンブルドア――死んでいるぞ!」
同じ言葉が繰り返された。周りに集まってきた人々の影が息を呑のみ、自分の周りに同じ言葉を伝えた……叫さけぶように伝える者――金かな切きり声で伝える者――言葉が夜の闇やみに伝でん播ぱした――。「死んでいる!」「死んでいる!」「セドリック・ディゴリーが! 死んでいる!」
「ハリー、手を離しなさい」ファッジの言う声が聞こえ、ぐったりしたセドリックの体から、ハリーの手を指で引き剥はがそうとしているのを感じた。しかし、ハリーはセドリックを離さなかった。
すると、ダンブルドアの顔が――まだぼやけ、霧がかかっているような顔が近づいてきた。
「ハリー、もう助けることはできんのじゃ。終わったのじゃよ。離しなさい」
「セドリックは、僕に連れて帰ってくれと言いました」ハリーが呟つぶやいた――大切なことなんだ。説明しなければと思った。「セドリックは僕に、ご両親の許もとに連れて帰ってくれと言ったのです……」
「もうよい、ハリー……さあ、離しなさい……」
ダンブルドアは屈かがみ込んで、痩やせた老人とは思えない力でハリーを抱き起こし、立たせた。ハリーはよろめいた。頭がズキズキした。傷いたんだ足は、もはや体を支えることができなかった。周りの群衆ぐんしゅうがもっと近づこうと、押し合いへし合いしながら暗い顔でハリーを取り囲んだ。「どうしたんだ?」「どこか悪いのか?」「ディゴリーが死んでる!」
「医い務む室しつに連れていかなければ!」ファッジが大声で言った。「この子は病気だ。怪け我がしている――ダンブルドア、ディゴリーの両親を。二人ともここに来ている。スタンドに……」
「ダンブルドア、わたしがハリーを医務室に連れていこう。わたしが連れていく――」
「いや、むしろここに――」
「ダンブルドア、エイモス・ディゴリーが走ってくるぞ……こちらに来る……話したほうがいいのじゃないかね――ディゴリーの目に入る前に?」
「ハリー、ここにじっとしているのじゃ――」
女の子たちが泣き喚わめき、ヒステリー気味にしゃくり上げていた……ハリーの目にその光景が、奇妙に映ったり消えたりしている……。