「ヴォルデモートが戻ったのか? ハリー? それは確かか? どうやって戻ったのだ?」
「あいつは父親の墓からと、ワームテールと僕から材料を取った」
ハリーが言った。頭はだんだんはっきりしてきたし、傷きず痕あとの痛みもそうひどくはなかった。ムーディの部屋が暗かったにもかかわらず、いまはその顔がはっきりと見えた。遠くのクィディッチ競きょう技ぎ場じょうから、まだ悲ひ鳴めいや叫さけび声が聞こえてきた。
「闇の帝王はおまえから何を取ったのだ?」ムーディが聞いた。
「血を」ハリーは腕を上げた。ワームテールが短剣で切り裂さいた袖そでが破れていた。
ムーディはシューッと長い息を漏もらした。
「それで、死喰い人は? やつらは戻ってきたのか?」
「はい」ハリーが答えた。「大勢……」
「あの方は死喰い人をどんなふうに扱ったかね?」ムーディが静かに聞いた。「許したか?」
しかし、ハリーははっと気づいた。ダンブルドアに話すべきだった。あのとき、すぐに話すべきだった――「ホグワーツに死喰い人がいるんです。ここに、死喰い人がいる――そいつが僕の名前を『炎ほのおのゴブレット』に入れて、僕に最後までやり遂げさせたんだ――」
ハリーは起き上がろうとした。しかし、ムーディが押し戻した。
「誰が死喰い人か、わしは知っている」ムーディが落ち着いて言った。
「カルカロフ?」ハリーが興こう奮ふんして言った。「どこにいるんです? もう捕まえたんですか? 閉じ込めてあるんですか?」
「カルカロフ?」ムーディは奇妙な笑い声を上げた。「カルカロフは今夜逃げ出したわ。腕についた闇やみの印しるしが焼けるのを感じてな。闇の帝てい王おうの忠実なる支持者を、あれだけ多く裏切ったやつだ。連中に会いたくはなかろう……しかし、そう遠くへは逃げられまい。闇の帝王には敵を追つい跡せきするやり方がある」
「カルカロフがいなくなった? 逃げた? でも、それじゃ――僕の名前をゴブレットに入れたのは、カルカロフじゃないの?」
「違う」ムーディは言葉を噛かみ締めるように言った。「違う。あいつではない。わしがやったのだ」
ハリーはその言葉を聞いた。しかし、呑のみ込めなかった。