ワームテールが短剣でハリーの腕を突き刺した件くだりになると、シリウスが激はげしく罵ののしった。ダンブルドアがあまりにすばやく立ち上がったので、ハリーは驚いた。ダンブルドアは机を回り込んでやってきて、ハリーに腕を出して見せるように言った。ハリーは、切り裂かれたローブと、その下の傷を二人に見せた。
「僕の血が、ほかの誰の血よりも、あの人を強くするとあの人自身が言ってました」ハリーがダンブルドアに言った。「僕を護っているものが――僕の母が残してくれたものが――あの人にも入るのだと言ってました。そのとおりでした――ヴォルデモートは僕に触さわっても傷つきませんでした。僕の顔を触ったんです」
ほんの一瞬いっしゅん、ハリーはダンブルドアの目に勝ち誇ほこったような光を見たような気がした。しかし、次の瞬間、ハリーはきっと勘かん違ちがいだったと思った。机の向こう側に戻ったダンブルドアが、ハリーがこれまで見たこともないほど老け込んで、疲れて見えたからだ。
「なるほど」ダンブルドアは再び腰をかけた。「ヴォルデモートはその障害については克服したというわけじゃな。ハリー、続けるのじゃ」
ハリーは話し続けた。ヴォルデモートが大おお鍋なべからどのように蘇よみがえったのかを語り、死し喰くい人びとたちへのヴォルデモートの演説を、思い出せるかぎり話して聞かせた。それから、ヴォルデモートがハリーの縄なわ目めを解き、杖つえを返し、決けっ闘とうしようとしたことを話した。
しかし、金こん色じきの光がハリーとヴォルデモートの杖同士をつないだ件くだりでは、ハリーは喉のどを詰まらせた。話し続けようとしても、ヴォルデモートの杖から現れたものの記憶が、どっと溢あふれ、胸が一杯になってしまったのだ。セドリックが出てくるのが見える。年老いた男が、バーサ・ジョーキンズが……母が……父が……。
シリウスが沈ちん黙もくを破ってくれたのが、ハリーにはありがたかった。