ふと気がつくと、フォークスはもうハリーの膝ひざを離れていた。不ふ死し鳥ちょうは床に舞い降りていた。そして、その美しい頭かしらをハリーの傷ついた足にもたせかけ、その目からは真しん珠じゅのようなとろりとした涙が、蜘く蛛もが残した足の傷にこぼれ落ちていた。痛みが消えた。皮ひ膚ふは元通りになり、足は癒いえた。
「もう一度言う」不死鳥が舞い上がり扉とびらのそばの止まり木に戻ると、ダンブルドアが言った。「ハリー、今夜きみは、わしの期待を遥はるかに超える勇気を示した。きみは、ヴォルデモートの力がもっとも強かった時代に戦って死んだ者たちに劣らぬ勇気を示した。一人前の魔法使いに匹ひっ敵てきする重荷を背負い、大人おとなに勝るとも劣らぬきみ自身を見出したのじゃ――さらにきみはいま、われわれが知るべきことをすべて話してくれた。わしと一いっ緒しょに医い務む室しつに行こうぞ。今夜は寮りょうに戻らぬほうがよい。魔ま法ほう睡すい眠みん薬やく、それに安静じゃ……シリウス、ハリーと一緒にいてくれるかの?」
シリウスが頷うなずいて立ち上がった。そして黒い犬に変身し、ハリー、ダンブルドアと一緒に部屋を出て階段を下り、医務室までついていった。
ダンブルドアが医務室のドアを開けると、そこにはウィーズリーおばさん、ビル、ロン、ハーマイオニーが、弱りきった顔をしたマダム・ポンフリーを取り囲んでいた。どうやら、「ハリーはどこか」「ハリーの身に何が起こったか」と問い詰めていた様子だ。
ハリー、ダンブルドア、そして黒い犬が入ってくると、みんないっせいに振り返った。ウィーズリーおばさんは声を詰まらせて叫さけんだ。
「ハリー! ああ、ハリー!」
おばさんはハリーに駆かけ寄ろうとしたが、ダンブルドアが二人の間に立ち塞ふさがった。