「何事じゃ」
ダンブルドアは鋭するどい目でファッジを、そしてマクゴナガル先生を見た。
「病人たちに迷めい惑わくじゃろう? ミネルバ、あなたらしくもない――バーティ・クラウチを監かん視しするようにお願いしたはずじゃが――」
「もう見張る必要がなくなりました。ダンブルドア!」マクゴナガル先生が叫んだ。
「大臣がその必要がないようになさったのです!」
ハリーはマクゴナガル先生がこんなに取り乱した姿を初めて見た。怒りのあまり頬ほおはまだらに赤くなり、両手のこぶしを握り締め、わなわなと震ふるえている。
「今夜の事件を引き起こした死し喰くい人びとを捕らえたと、ファッジ大臣にご報告したのですが」
スネイプが低い声で言った。
「すると、大臣はご自分の身が危険だと思われたらしく、城に入るのに吸きゅう魂こん鬼きを一体呼んで自分につき添そわせると主張なさったのです。大臣はバーティ・クラウチのいる部屋に、吸魂鬼を連れて入った――」
「ダンブルドア、私わたくしはあなたが反対なさるだろうと大臣に申し上げました!」マクゴナガル先生がいきり立った。「申し上げましたとも。吸魂鬼が一歩たりとも城内に入ることは、あなたがお許しになりませんと。それなのに――」
「失礼だが!」ファッジも喚わめき返した。ファッジもまた、こんなに怒っている姿をハリーは初めて見た。「魔ま法ほう大だい臣じんとして、護ご衛えいを連れていくかどうかは私が決めることだ。尋じん問もんする相手が危険性のある者であれば――」
しかし、マクゴナガル先生の声がファッジの声を圧倒した。
「あの――あの物が部屋に入った瞬間しゅんかん」マクゴナガル先生は、全身をわなわなと震ふるわせ、ファッジを指差して叫さけんだ。「クラウチに覆おおいかぶさって、そして――そして――」
マクゴナガル先生が、何が起こったのかを説明する言葉を必死に探している間、ハリーは胃が凍こおっていくような気がした。マクゴナガル先生が最後まで言うまでもない。ハリーは吸きゅう魂こん鬼きが何をやったのかわかっていた。バーティ・クラウチに死の接せっ吻ぷんを施したのだ。口から魂たましいを吸い取ったのだ。クラウチは死よりも酷むごい姿になった。