「どのみち、クラウチがどうなろうと、何の損失にもなりはせん!」ファッジが怒ど鳴なり散らした。「どうせやつは、もう何人も殺しているんだ!」
「しかし、コーネリウス、もはや証言ができまい」ダンブルドアが言った。
まるで初めてはっきりとファッジを見たかのように、ダンブルドアはじっと見つめていた。
「なぜ何人も殺したのか、クラウチは何ら証言できまい」
「なぜ殺したか? ああ、そんなことは秘ひ密みつでも何でもなかろう?」ファッジが喚いた。
「あいつは支し離り滅めつ裂れつだ! ミネルバやセブルスの話では、やつは、すべて『例のあの人』の命令でやったと思い込んでいたらしい!」
「たしかに、ヴォルデモート卿きょうが命令していたのじゃ、コーネリウス」ダンブルドアが言った。「何人かが殺されたのは、ヴォルデモートが再び完全に勢力を回復する計画の布ふ石せきにすぎなかったのじゃ。計画は成功した。ヴォルデモートは肉体を取り戻した」
ファッジは誰かに重たいもので顔を殴なぐりつけられたような顔をした。呆ぼう然ぜんとして目を瞬しばたたきながら、ファッジはダンブルドアを見つめ返した。いま聞いたことが、にわかには信じがたいという顔だ。
目を見開いてダンブルドアを見つめたまま、ファッジはブツブツ言いはじめた。
「『例のあの人』が……復活した? ばかばかしい。おいおい、ダンブルドア……」
「ミネルバもセブルスもあなたにお話ししたことと思うが」ダンブルドアが言った。「わしらはバーティ・クラウチの告白を聞いた。真しん実じつ薬やくの効き目で、クラウチは、わしらにいろいろ語ってくれたのじゃ。アズカバンからどのようにして隠おん密みつに連れ出されたか、ヴォルデモートが――クラウチがまだ生きていることをバーサ・ジョーキンズから聞き出し――クラウチを、どのように父親から解放するにいたったか、そして、ハリーを捕まえるのに、ヴォルデモートがいかにクラウチを利用したかをじゃ。計画はうまくいった。よいか、クラウチはヴォルデモートの復活に力を貸したのじゃ」