ファッジはちょっと顔を赤らめたが、すぐに挑戦的で、意固地な表情になった。
「だとしたら、どうだと言うのかね?」ダンブルドアを見ながら、ファッジが言った。「あなたはこの子に関する事実をいくつか隠していた。そのことを私が知ったとしたらどうなるかね? 蛇へび語ご使づかいだって、え? それに、城のいたるところでおかしな発作を起こすとか――」
「ハリーの傷きず痕あとが痛んだことを言いたいのじゃな?」ダンブルドアが冷静に言った。
「では、ハリーがそういう痛みを感じていたと認めるわけだな?」すかさずファッジが言った。「頭痛か? 悪夢か? もしかしたら――幻げん覚かくか?」
「コーネリウス、聞くがいい」
ダンブルドアがファッジに一歩詰め寄った。クラウチの息子に「失しっ神しん術じゅつ」をかけた直後にハリーが感じた、あの何とも形容しがたい力が、またしてもダンブルドアから発散しているようだった。
「ハリーは正常じゃ。あなたやわしと同じように。額ひたいの傷きず痕あとは、この子の頭脳を乱してはおらぬ。ヴォルデモート卿きょうが近づいたとき、もしくは殊こと更さらに残忍な気持になったとき、この子の傷痕が痛むのだと、わしはそう信じておる」
ファッジはダンブルドアから半歩後あと退ずさりしたが、意固地な表情は変わらなかった。
「お言葉だが、ダンブルドア、呪のろいの傷痕が警鐘けいしょうとなるなどという話は、これまでついぞ聞いたことが……」
「でも、僕はヴォルデモートが復活するのを、見たんだ!」ハリーが叫さけんだ。
ハリーはベッドから出ようとしたが、ウィーズリーおばさんが押し戻した。
「僕は、死し喰くい人びとを見たんだ! 名前をみんな挙げることだってできる! ルシウス・マルフォイ――」
スネイプがピクリと動いた。しかし、ハリーがスネイプを見たときには、スネイプの目はすばやくファッジに戻っていた。