「いいか、言っておくが、ダンブルドア」ファッジは人差し指を立て、脅おどすように指を振った。
「私はいつだってあなたの好きなように、自由にやらせてきた。あなたを非常に尊敬してきた。あなたの決定に同意しないことがあっても何も言わなかった。魔ま法ほう省しょうに相談なしに狼おおかみ人にん間げんを雇やとったり、ハグリッドをここに置いておいたり、生徒に何を教えるかを決めたり、そうしたことを黙だまってやらせておく者はそう多くないぞ。しかし、あなたがその私に逆らうというのなら――」
「わしが逆らう相手は一人しかいない」ダンブルドアが言った。「ヴォルデモート卿きょうだ。あなたもやつに逆らうのなら、コーネリウス、われわれは同じ陣じん営えいじゃ」
ファッジはどう答えていいのか思いつかないようだった。しばらくの間、小さな足の上で、体を前後に揺ゆすり、山やま高たか帽ぼうを両手でくるくる回していた。
ついに、ファッジが弁解がましい口調で言った。
「戻ってくるはずがない。ダンブルドア、そんなことはありえない……」
スネイプが左の袖そでをまくり上げながら、ズイッとダンブルドアの前に出た。そして腕を突き出し、ファッジに見せた。ファッジが怯ひるんだ。
「見るがいい」スネイプが厳きびしい声で言った。
「さあ、闇やみの印しるしだ。一時間ほど前には、黒く焼け焦こげて、もっとはっきりしていた。しかし、いまでも見えるはずだ。死し喰くい人びとはみなこの印を闇の帝てい王おうによって焼きつけられている。互いに見分ける手段でもあり、我々を召集する手段でもあった。あの人が誰か一人の死喰い人の印に触ふれたときは、全員が『姿すがたくらまし』し、すぐさまあの人の下もとに『姿現わし』することになっていた。この印が、今年になってからずっと、鮮せん明めいになってきていた。カルカロフのもだ。カルカロフはなぜ今夜逃げ出したと思うか? 我々は二人ともこの印が焼けるのを感じたのだ。二人ともあの人が戻ってきたことを知ったのだ。カルカロフは闇の帝てい王おうの復讐ふくしゅうを恐れた。やつはあまりに多くの死喰い人を裏切った。仲間として歓迎されるはずがない」