「ミネルバ」ダンブルドアがマクゴナガル先生のほうを見た。「わしの部屋で、できるだけ早くハグリッドに会いたい。それから――もし、来ていただけるようなら――マダム・マクシームも」
マクゴナガル先生は頷うなずいて、黙だまって部屋を出ていった。
「ポピー」ダンブルドアがマダム・ポンフリーに言った。「頼みがある。ムーディ先生の部屋に行って、そこに、ウィンキーという屋や敷しき妖よう精せいがひどく落ち込んでいるはずじゃから、探してくれるか? できるだけの手を尽くして、それから厨房ちゅうぼうに連れて帰ってくれ。ドビーが面倒を見てくれるはずじゃ」
「は、はい」驚いたような顔をして、マダム・ポンフリーも出ていった。
ダンブルドアはドアが閉まっていることを確認し、マダム・ポンフリーの足音が消え去るまで待ってから、再び口を開いた。
「さて、そこでじゃ。ここにいる者の中で二名の者が、互いに真しんの姿で認め合うべきときが来た。シリウス……普通の姿に戻ってくれぬか」
大きな黒い犬がダンブルドアを見上げ、一瞬いっしゅんで男の姿に戻った。
ウィーズリーおばさんが叫さけび声を上げてベッドから飛び退のいた。
「シリウス・ブラック!」おばさんがシリウスを指差して金かな切きり声を上げた。
「ママ、静かにして!」ロンが声を張り上げた。「大丈夫だから!」
スネイプは叫びもせず、飛び退きもしなかったが、怒りと恐怖の入り交まじった表情だった。
「こやつ!」スネイプに負けず劣らず嫌けん悪おの表情を見せているシリウスを見つめながら、スネイプが唸うなった。「やつがなんでここにいるのだ?」
「わしが招待しょうたいしたのじゃ」ダンブルドアが二人を交互に見ながら言った。「セブルス、きみもわしの招待じゃ。わしは二人とも信頼しておる。そろそろ二人とも、昔のいざこざは水に流し、互いに信頼し合うべきときじゃ」
ハリーには、ダンブルドアがほとんど奇跡を願っているように思えた。シリウスとスネイプは、互いにこれ以上の憎しみはないという目つきで睨にらみ合っている。