「ダームストラングの生徒はどうやって帰るんだろ?」ロンが言った。「カルカロフがいなくても、あの船の舵かじ取りができると思うか?」
「カルカロフヴぁ、舵を取っていなかった」ぶっきらぼうな声がした。「あの人ヴぁ、自分がキャビンにいて、ヴぉくたちに仕事をさせた」
クラムはハーマイオニーに別れを言いに来たのだ。
「ちょっと、いいかな?」クラムが頼んだ。
「え……ええ……いいわよ」ハーマイオニーは少しうろたえた様子で、クラムについて人混みの中に姿を消した。
「急げよ!」ロンが大声でその後ろ姿に呼びかけた。「もうすぐ馬車が来るぞ!」
そのくせ、ロンはハリーに馬車が来るかどうかを見張らせて、自分はそれから数分間、クラムとハーマイオニーがいったい何をしているのかと、人ひと群むれの上に首を伸ばしていた。
二人はすぐに戻ってきた。ロンはハーマイオニーをじろじろ見たが、ハーマイオニーは平然としていた。
「ヴぉく、ディゴリーが好きだった」突然クラムがハリーに言った。
「ヴぉくに対して、いつも礼儀正しかった。いつも。ヴぉくがダームストラングから来ているのに――カルカロフと一いっ緒しょに」クラムは顔をしかめた。
「新しい校長はまだ決まってないの?」ハリーが聞いた。
クラムは肩をすぼめて、知らないという仕し種ぐさをした。クラムもフラーと同じように手を差し出して、ハリーと握あく手しゅし、それからロンと握手した。
ロンはなにやら内心の葛かっ藤とうに苦しんでいるような顔をした。クラムがもう歩き出したとき、ロンが突然叫さけんだ。
「サイン、もらえないかな?」
ハーマイオニーが横を向き、ちょうど馬車道を近づいてきた馬なしの馬車のほうを見て微ほほ笑えんだ。クラムは驚いたような顔をしたが、うれしそうに羊よう皮ひ紙しの切れ端はしにサインした。