「ハグリッドがマダム・マクシームに自分のお母さんのことを話すのを僕たちが聞いちゃったあの夜、石せき像ぞうにコガネムシが止まってたっけ!」
「そうなのよ」ハーマイオニーが言った。「それに、ビクトールが湖のそばで私と話したあとで、私の髪かみからゲンゴロウを取り除いてくれたわ。それに、私の考えが間違ってなければ、あなたの傷きず痕あとが痛んだ日、「占うらない学がく」の教室の窓枠にリータが止まっていたはずよ。この女、この一年、ずっとネタ探しにブンブン飛び回っていたんだわ」
「僕たちが木の下にいるマルフォイを見かけたとき……」ロンが考えながら言った。
「マルフォイは手の中のリータに話していたのよ」ハーマイオニーが言った。
「マルフォイはもちろん、知ってたんだわ。だからリータはスリザリンの連中からあんなにいろいろお誂あつらえ向きのインタビューが取れたのよ。スリザリンは、私たちやハグリッドのとんでもない話をリータに吹き込めるなら、あの女が違法なことをしようがどうしようが、気にしないんだわ」
ハーマイオニーはロンから広ひろ口くち瓶びんを取り戻し、コガネムシに向かってニッコリした。コガネムシは怒ったように、ブンブン言いながらガラスにぶつかった。
「私、ロンドンに着いたら出してあげるって、リータに言ったの」ハーマイオニーが言った。
「ガラス瓶に『割われない呪じゅ文もん』をかけたの。ね、だから、リータは変身できないの。それから、私、これから一年間、ペンは持たないようにって、言ったの。他人のことで嘘うそ八はっ百ぴゃくを書く癖くせが治るかどうか見るのよ」
落ち着き払って微ほほ笑えみながら、ハーマイオニーはコガネムシをカバンに戻した。
コンパートメントのドアがスーッと開いた。