残りの旅は楽しかった。事実、ハリーはこのままで夏が過ぎればいい。キングズ・クロスに着かないでほしいと思った……しかし、ハリーが今年、苦しい経験から学んだように、何か嫌いやなことが待ち受けているときには、時間は決してゆっくり過ぎてはくれない。あっという間に、ホグワーツ特急は9と4分の3番線に入線していた。生徒が列車を下りるときの、いつもの混雑と騒音が廊ろう下かに溢あふれた。ロンとハーマイオニーは、トランクを抱えてマルフォイ、クラッブ、ゴイルを跨またぐのに苦労していた。しかし、ハリーはじっとしていた。
「フレッド――ジョージ――ちょっと待って」
双ふた子ごが振り返った。ハリーはトランクを開けて、対たい抗こう試じ合あいの賞金を取り出した。
「受け取って」ハリーはジョージの手に袋を押しつけた。
「何だって?」フレッドがびっくり仰天ぎょうてんした。
「受け取ってよ」ハリーがきっぱりと繰り返した。「僕、要いらないんだ」
「狂ったか」ジョージが袋をハリーに押し返そうとした。
「ううん。狂ってない」ハリーが言った。「君たちが受け取って、発明を続けてよ。これ、悪いた戯ずら専せん門もん店てんのためさ」
「やっぱり狂ってるぜ」フレッドがほとんど恐れをなしたように言った。
「いいかい」ハリーが断固として言った。「君たちが受け取ってくれないなら、僕、これを溝どぶに捨てちゃう。僕、ほしくないし、必要ないんだ。でも僕、少し笑わせてほしい。僕たち全員、笑いが必要なんだ。僕の感じでは、まもなく僕たち、これまでよりもっと笑いが必要になる」
「ハリー」ジョージが両手で袋の重みを計りながら、小さい声で言った。「これ、一千ガリオンもあるはずだ」
「そうさ」ハリーがニヤリと笑った。「カナリア・クリームがいくつ作れるかな」
双ふた子ごが目を見張ってハリーを見た。