「えーっと――いい考えだと思ったんだけど」ハーマイオニーは自信を失ったような声を出した。「だって、アンブリッジがポケットの中身を見せなさいって言っても、金貨を持ってることは別に怪しくないでしょ でも……まあ、みんなが使いたくないなら――」
「君、『変幻自在術』が使えるの」テリー・ブートが言った。
「ええ」ハーマイオニーが答えた。
「だって、それ……それ、いもり試験レベルだぜ。それって」テリーが声を呑のんだ。
「ああ」ハーマイオニーは控ひかえめに言おうとしていた。「ええ……まあ……うん……そうでしょうね」
「君、どうしてレイブンクローに来なかったの」テリーが、七なな不ふ思し議ぎでも見るようにハーマイオニーを見つめながら問い詰つめた。「その頭脳ずのうで」
「ええ、組分け帽子ぼうしが私の寮りょうを決めるとき、レイブンクローに入れようかと真剣しんけんに考えたの」ハーマイオニーが明るく言った。「でも、最後にはグリフィンドールに決めたわ。それじゃ、ガリオン金貨を使っていいのね」
ザワザワと賛成の声が上がり、みんなが前に出てバスケットから一枚ずつ取った。ハリーはハーマイオニーを横目で見ながら言った。
「あのね、僕これで何を思い出したと思う」
「わからないわ。何」
「『死し喰くい人びと』の印。ヴォルデモートが誰か一人の印に触さわると、全員の印が焼けるように熱くなって、それで集合命令が出たことがわかるんだ」
「ええ……そうよ」ハーマイオニーがひっそり言った。「実はそこからヒントを得たの……でも、気がついたでしょうけど、私は日付けを金属きんぞくのかけらに刻きざんだの。団員だんいんの皮ひ膚ふにじゃないわ」
「ああ……君のやり方のほうがいいよ」ハリーは、ガリオン金貨をポケットに滑すべり込こませながらニヤッと笑った。「一つ危険なのは、うっかり使っちゃうかもしれないってことだな」
「残念でした」自分の偽にせ金貨をちょっと悲しそうにいじりながら、ロンが言った。「間違えたくても本物を持ってないもの」