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決められた以外のせりふ01

时间: 2019-01-06    进入日语论坛
核心提示:小自伝 自分の伝記を書くほど易しい事はないし、また難かしい事もない。そんなものは無いと言ってしまうのが一番かも知れぬ。 
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小自伝
 
 
 自分の伝記を書くほど易しい事はないし、また難かしい事もない。そんなものは無いと言ってしまうのが一番かも知れぬ。
 一九二〇年三月三十日、東京に生れた。聖学院付属幼稚園のクリスマスに、はじめてせりふめいたものを喚《わめ》いた。
 東京高等師範の付属小学校に入学。母や祖母に連れられて、よく歌舞伎へ行った。グリムと西遊記とを愛読した。学藝会の芝居では、常に猛獣の役を演じた。一例、イソップのライオン。
 同じく付属中学に入学。語学、歴史、幾何、体操を好み、化学と修身とを憎んだ。シェイクスピア、シング、チェーホフ等を読み、戯曲めいたものを幾つか書いた。学藝会では常に悪党を演じた。一例、シャイロック。外交官になりたいと思った。考古学にも憧れた。
 慶応の仏文科に入り、乱読し、詩を書いた。辰野博士の戯曲講義に驚き、映画のルイ・ジュヴェに感動した。加藤道夫を知り、学生劇団を作り、戯曲の翻訳、演出、演技、装置等を試みた。芝居を生涯の仕事にしようと思いつめた。それは、一種の狂気だった。俳優としては常に振られ男を演じた。一例、スガナレル。
 一九四二年、卒業と同時に軍隊に入った。戦後、二、三の職業的および非職業的劇団の舞台を踏んだ後、一九四九年三月文学座に入り、舞台と映画とラジオとで、いくつかの仕事をした。
 これが総てであり、総ては仕事の中にしかない。狂気からすっかり覚め切らないうちは、ほんとうの自叙伝は書けないだろう。
                                             ——一九五三年一二月 悲劇喜劇——
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