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決められた以外のせりふ03

时间: 2019-01-06    进入日语论坛
核心提示:あくたがわ 芥川という姓は、多くはないが、とりわけ珍しい姓ではなさそうである。東京二十三区の電話帳を繰ってみると、四十一
(单词翻译:双击或拖选)
あくたがわ
 
 
 芥川という姓は、多くはないが、とりわけ珍しい姓ではなさそうである。東京二十三区の電話帳を繰ってみると、四十一人の芥川がならんでいる。
 小学生の時、「アクタガワってのは、ゴミカワとも読めるな」と、つまらぬ発見をしたのは、級長の宮沢喜一で、それ以来、私にけんかを売ろうとする奴は、私のことを「ゴミカワ」と呼ぶだけで目的を達するようになった。気がとがめたと見えて、級長は、彼の発見した呼び名に見切りをつけ、その代りに「アク」という略称を用いるようになった。こっちも「ミヤ」と呼んでやった。あいこである。
 しかし、新任の教師に、ほんとうに「ゴミカワ君」と呼ばれたこともあって、その時はさすがにがっかりした。
「セリカワ」と間違えられることは、しょっちゅうであった。
 林間学校の女の先生に、「カラシガワさん」と言われた時には、あっけにとられた。ずいぶん、ややこしく間違える人だと思った。
 市電の中で回数券を落したら、拾った車掌が「チャガワさん」と言った。そんな例をかぞえていたら切りがない。
 ある小雨のふる晩、頼みもしない木の芽田楽が五人前とどいた。出前が「たしかに電話でこちらと伺いました、田端の芥川さんはこちらだけですから」と言う。祖母が「うちには電話はありませんよ、動坂の芥川さんの聞きちがえじゃないのかえ」と言う。押し問答をしているうちに、晩酌をちびりちびりやっていた祖父がかんしゃくを起して「しょうがねえ、さめちまっちゃ何もならねえから、喰っちまおう」と言った。田楽はうまかったが、何だかへんな気分であった。
 翌日、入れ物を取りにきた出前が、あやまった。つい近頃越してきたアスカガワさんからの注文を、お宅と聞きちがえたと言う。
「へえ、めずらしい苗字があるものだ。飛ぶ鳥の川と書くんですとさ」と祖母が言った時、私はどういうわけだか、着物をきて、眼鏡をかけた眉根に皺をよせて、難かしい本を読んでいる学者のような人の姿を想像したことをおぼえている。自分の苗字よりも、もっと難かしい苗字があることを発見して、私は何となく安心した。
 毎年正月になると、祖母はよく「御先祖」の話をしてくれた。
「御先祖」は三河の出である。小牧長久手の合戦の小ぜりあいに負けた「家康公」が本多忠勝といっしょに命からがら落ちのびてくると、川があった。百姓がひとり、大根を洗っていた。本多忠勝は「これは権現様だから、おぶって向う岸へお渡し申せ」と言い、自分は長柄の槍をついてざぶざぶと歩いて渡った。百姓は言いつけられた通りにした。そのお蔭で「家康公」は無事に追手からのがれて、小牧長久手の戦に勝つことができたのである。のちに千代田城に入った「家康公」は、その時の百姓を想い出し、「召し出して扶持を取らせよ」と言った。そこで「御先祖」は江戸へ出てきて、御奥坊主になったのだ。苗字を賜わるよう願い出たら、「家康公」は「あの川の名を苗字にしろ」と言った。その川の名が芥川だったから、うちは芥川というのだよ……。
 怪しい話だが、芥川家が代々、御奥坊主だったことはほんとうである。
 川の名として由緒の正しいのは、淀川の支流で、山崎のあたりを流れる芥川であろう。「伊勢物語」にも出てくるし、狂言にもなっている。
 忍術に、芥川流というのがあるそうである。伊賀流、甲賀流ほど有名ではないが、金剛流などというのとあわせて、忍術五流の一つにかぞえられている由だから、これも由緒ある芥川にちがいない。
 三河の出の芥川というのは、どうも場違いのような気がする。山城あたりが本場なのではあるまいか。漠然とそんなことを考えながら、それ以上にあれこれと調べるほどの興味もないままに過している。
 先日、ある席で、かなりの年配の方から声をかけられた。「あなたとは同姓で」と言われる。
「失礼ですが、お国はどちらですか」
「私は熊本です。菊池のちかくです」
 私はびっくりした。肥後の菊池は、高松出身の菊池寛の祖先の地だった筈である。
「そこには多いのですか、芥川は」
「ええ、かなりありますな。だいぶ古いようですよ」
 一瞬私は、歴史好きの二人の作家が、肥後の菊池と芥川について、彼等の祖先もまた友人同士であったかどうかについて、談論風発している様子を想像したが、ちょうどその時、生憎《あいにく》なことに、スピーカーの声が私たちを呼びたてた。正確に言うと、私たちのどちらか一人を、である。スピーカーは、妙にやさしい声でこう言っていた。
「アキタガワさま、アキタガワさま、お電話です」
                                               ——一九六五年一月 中央公論——
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