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带电人M-移动地面

时间: 2022-01-30    进入日语论坛
核心提示:動く床 はてしもない長さです。もう、たしかに二百メートルは、歩いたでしょう。しかし、まだトンネルは終わらないのです。 こ
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動く床


 はてしもない長さです。もう、たしかに二百メートルは、歩いたでしょう。しかし、まだトンネルは終わらないのです。
 こんな長いトンネルを、世間に知られないように、よく造ったものだと、いまさら、二十面相の力に、驚くばかりです。
 五百メートルも、歩いたでしょうか。いや、六百メートル、ことによると七百メートルもあったかもしれません。とうとう、行き止まりにつきました。
 途中では、さいわい、だれにも出会いませんでしたが、しかし、たとえ、出会っても、ポケット小僧は、大丈夫だと、思っていました。
 黒いシャツ、黒いふくめん、黒い手袋、黒い靴で、頭から足の先まで、まっ黒なものですから、もし、だれかがきたら、かべにぴったり、くっついてしまえばいいのです。暗いところですから、相手は、気がつかないで、通り過ぎるでしょう。
 ポケット小僧は、これまでに、いくども、そうして、相手をごまかしたことがあるのです。
 しかし、もうトンネルはおしまいです。前には、コンクリートのかべが、立ちふさがっていて、どこへも行けないのです。
 でも、ほんとうに行き止まりのはずはありません。どこかに、かくし戸があるにちがいないのです。ポケット小僧は、懐中電灯で、正面のかべを照らしてみました。
「あっ、あった。あれだっ。」
 ちょっと見たのでは、わからないけれども、ガレージの入口と同じような、かくしボタンがあったのです。
 ポケット小僧は、また、さっきの魔法の杖をとりだして、そのボタンを押すと、コンクリートのかべが、静かに動いて、通り道ができました。
 中にはいると、そこはまっくらな部屋でした。なにがいるかわからないので、うっかり懐中電灯はつけられません。かべをつたって、手さぐりで、進んで行きました。
 じきに、曲がりかどに、きました。また、そのかべをつたって行きますと、つぎも曲がりかどです。そして、また、つぎのかど。また、つぎのかど。かどは八つありました。
「おや、この部屋は、八角形だな。それに、おそろしく、広い部屋だ。」
 ポケット小僧は、びっくりして、つぶやきました。
 なおも、進んで行きますと、まだ、つぎのかどがあります。九つ、十、十一、十二……いつまでいっても、きりがありません。なんという、広い部屋でしょう。
 あんまりふしぎなので、ポケット小僧は、チラッと懐中電灯をつけてみました。
「なあんだ、四角な小さな部屋じゃないか。」
 思わず、クスクスと笑いました。まったくの暗闇なので、手ざわりで、かどにくるたびに、一角とかんじょうしたので、八角も十角もある、べらぼうに広い部屋と、勘違いしてしまったのです。
 この部屋には、ドアはついていませんが、コンクリートのかべに、四角な線があらわれていましたので、押してみますと、スーッと、むこうへ開きました。
 その外は、廊下のようなところでした。どちらへ行っていいのかわからないので、ともかく、右の方へ、進んで行きました。
 廊下は、ぐるぐる曲がっていて、ところどころに、かくし戸らしいものが、ついていました。押してみると、あくのもあり、あかないのもあります。あいたときには、中をのぞいて、耳をすましてから、パッと懐中電灯を照らしてみましたが、どの部屋も、みんなからっぽでした。
 ところが、ぐるぐるまわって、五つめのかくし戸を開くと、中のようすが、いままでとちがうのです。だれか人間がいるようなけはいがします。
 ポケット小僧は、その部屋に、しのびこむと、よつんばいになって、ときどき、手を前にのばして、探りながら、進んで行きました。
 すると、あっ! なんだか、やわらかいものが手にさわったではありませんか。びっくりして、手をひっこめましたが、どうやら、そこにいるのは人間らしいのです。
 しばらく、闇の中で、にらみあうようにしていましたが、相手は、逃げもしなければ、手向かってくるようすもありません。
 ポケット小僧は、思いきって、パッと懐中電灯をつけ、すぐに消しました。しかし、その一瞬間に、相手をすっかり見てしまったのです。遠藤治郎君でした。元気なく、ぐったり横たわっているのです。
「ぼく、ポケット小僧だよ。安心しな。いまに、みんなが、きみを助けにくるからね。ぼくは、ひとりで、ようすを、さぐりにきたのさ。」
 それを聞くと、治郎君は安心したようですが、なにも言いません。口をきく元気もないのでしょう。
 しばらくすると、やっと、かすかな声で、言いました。
「きみ、ここは、お化け屋敷だよ。タコのような火星人が、うじゃうじゃいるんだ。ぼくは、そいつらに、とり巻かれて、ひどいめにあった。でも、さっき、みんなどっかへ、消えてしまったがね。」
 そして、ぼつぼつと、さきほどの、恐ろしいありさまを、話して聞かせるのでした。だが、そのうち、なんだか、みょうなことが起こりました。
 べつに、自分では動かないのに、からだが動いているような気がするのです。前の方へ、ぐんぐん進んで行くような気持です。
 そのとき、どこからか、恐ろしい声が、聞こえてきました。低いけれども、部屋じゅうに、ひびきわたるような、へんな声です。
「アハハハ……驚いたか。きみはいま、動いているんだぜ。ここでは床が動いて、歩かないでも、どこへでも行けるのだ。きみを、おもしろいところへ、連れて行ってやる。」
 あとでわかったのですが、それは、ベルト・コンベヤーを大きくしたような仕掛で、厚いリノリウムの床そのものが、動くのです。
 部屋の出口のドアのところにくると、その向こうの床も、同じように動いていて、ふたりは、スーッと、その方へ、送りこまれました。
 じつは、ポケット小僧の歩いてきた廊下も、同じ仕掛になっていたのですが、まだ動いていなかったので、気がつかなかったのです。
 いつか、都会の道路がこんなふうになるときがくるかもしれません。人間はその動く道の上に、ただ立っていればよいのです。電車も自動車もいりません。その道にさえ乗れば、どこへでも、行けるのです。さすがは電人Mです。その仕掛を、早くも自分のすみかにとりいれていたのです。
 ポケット小僧は、用心をしました。どこへ連れて行かれるのか、わかりませんが、もし明るい部屋に出たら、たちまち、見つかってしまいます。みつからないようにしなければなりません。そう思ったので、治郎君から離れて、ずっとうしろの方に、うつぶせになって、床と見分けがつかぬくらい、ひらべったくなっていました。

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