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带电人M-大闹贼巢

时间: 2022-01-30    进入日语论坛
核心提示:ポケット小僧の曲芸 原っぱを出ようとすると、ポケット小僧は、コンクリートの長い塀のようなものに、ぶつかってしまいました。
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ポケット小僧の曲芸


 原っぱを出ようとすると、ポケット小僧は、コンクリートの長い塀のようなものに、ぶつかってしまいました。どこかに出口はないかと、塀をつたって、横に進んで行きましたが、塀はどこまでもつづいています。しかも、まっすぐではなくて、みんなのかけているベンチをかこむように、丸くなっているのです。
「へんだなあ。こんな丸い塀の公園なんて、東京にあったかしら。」
 ポケット小僧は、首をかしげて、空を見あげました。
 すると、みょうなことに、気がついたのです。塀の向こうがわには星が一つも見えないではありませんか。
「おやっ、雲が出たのかな。」
と、うしろを振り返って見ますと、うしろの空には、さっきと同じように、たくさんの星が、キラキラと、輝いています。
 なんだかへんです。こんなに、くっきり、空が二つにわかれて、一方には少しも(くも)がなく、一方は厚い雲におおわれるということが、あるものでしょうか。
「あっ、そうだっ。わかったぞっ。」
 ポケット小僧は、思わず心の中で、さけびました。
 ここは、あの月世界旅行の見世物の、月球の内部にあるプラネタリウムだったのです。頭のいくつもある大きな黒い怪物は、プラネタリウムの機械だったのです。
 ポケット小僧がしのびこんだ桜井さんのガレージは、練馬区にあるのです。
 そして、月世界の見世物も、同じ練馬区でした。
 この二つの場所は、あんがい近いのかもしれません。二十面相は、その間に、長いトンネルを造ったのでしょう。
 いつか、小林団長は、二十面相と、月世界の見世物とは、なにか、関係があるんじゃないかと、言ったことがあります。ポケット小僧は、あのことばを、思い出しました。
 やっぱりそうだったのです。月世界のプラネタリウムは、昼間は、ほんとうの見世物として、大ぜいの客をいれ、夜がふけると、二十面相怪盗団の会合の場所に使われていたのです。そして、その地下つづきに、二十面相のかくれがが、造ってあったのです。
 あんなにぎやかな見世物の中に、二十面相のすみかがあるなんて、だれも考えおよばないことでした。
 見世物でお金をもうけるばかりでなく、それで世間の目をごまかしていたのです。二十面相らしい大胆(だいたん)なやりかたではありませんか。
 ポケット小僧は、なおも、塀をつたって、右へ右へと、進んでいきました。
 やがて、大きな入口の(とびら)のところへ、たどりつきました。その扉は、厳重に、かぎがかかっていて、びくとも動きません。
 しかたがないので、そこを通りすぎて、もっと右の方へ、進んで行きますと、また出入口があって、そこはドアが開いたままになっていました。
 そこは、昼間、プラネタリウムを見にくる人たちの、休憩室でした。広い部屋に、電灯がひとつだけついていて、あたりをボンヤリと、照らしています。
 やっぱり、ここは見世物のプラネタリウムでした。もう、間違いはありません。
 休憩室のかべぎわに、コンクリートの台があって、その上に、瀬戸物の大きな花瓶(かびん)が飾ってあります。高さ八十センチほどもある、りっぱな花瓶です。花もいけてないし、水も、はいっていません。ただ、部屋の飾りとして、置いてあるのです。これも二十面相が、どこからか盗んできた美術品のひとつかもしれません。
 ポケット小僧は、その花瓶を、じっと眺めていました。それから台の上に上がって、中に手をいれて、水がはいっていないことを、たしかめました。
「あっ、そうだ。この部屋で、見物の人たちは、宇宙服を脱いで、かかりの人にかえすんだな。あのしまった戸の中に、宇宙服をおく棚があるんだ。」
 ポケット小僧は、いつか月世界旅行の見世物を、見物したことがあるので、それを知っていたのです。
「ウフフフ……。」
 ポケット小僧の黒ふくめんの中から、低い笑い声がもれてきました。いたずらっぽい笑いです。なにかおもしろいことを、考えついたのでしょうか。
 それから、また、まっくらなプラネタリウムの中へ、もどっていきました。
 二十面相の部下たちは、会議がすんだので、半分はベンチから立ちあがっていましたが、まだ、半分は、腰かけたままです。
「あっ、痛いっ。」
 腰かけている部下のひとりが、小さい声でさけんで、ベンチの下を、のぞきこみました。なにかに、足をくいつかれたような気がしたからです。しかし、ベンチの下には、なにもいません。
「あっ、痛いっ。」
 こんどは、すこしへだたったベンチで、同じことがおこりました。
 それから、あちらでも、こちらでも、
「痛いっ。」「痛い。」
という声がおこり、みんながベンチの下をのぞくのです。
「おい、なにかいるよ。犬じゃないか。」
「いや、犬にしては、かみつきかたが小さいよ。ネズミだろう。」
「ネズミが人間にかみつくもんか。なにか、怪しい動物が、まぎれこんでいるんだ。」
「おい、懐中電灯をつけて、捜してみよう。」
 パッ、パッと、あちこちに、光がながれました。部下たちが懐中電灯をつけて、ベンチの下を照らしているのです。
「あっ、まっ黒なやつがいる。」
「人間だ! 人間の子どもだ。」
「よし、つかまえてしまえ。」
 とうとう、見つかりました。むろん、それはポケット小僧だったのです。かれは、からだが小さいのをさいわいに、ベンチの下をはい歩いて、部下たちの足を、つねって回ったのです。
 たちまち、みんなに、とりかこまれましたが、小さいうえに、すばしっこいポケット小僧は、ヒョイヒョイと身をかわして、リスのように逃げ回り、なかなか、つかまるものではありません。
 くらやみの中の鬼ごっこが、はじまりました。
「あっ、そっちへ行ったぞっ。」
「さあ、つかまえたっ。……あらっ、すべり抜けちゃった。なんて、すばやいやつだ。」
「痛いっ、おれのお尻に、かみつきやがった。こん畜生(ちくしょう)。」
 大さわぎです。相手はポケットにはいるといわれる、小さな子ども、こちらは、何十人の大人です。追っかける方が、多すぎて、同士打ちなんかやって、かえって、つかまらないのです。
 パッと、プラネタリウムの丸屋根に、電灯がつきました。だれかが、スイッチを入れたのです。
「おやっ、どこへ行ったんだ。」
「休憩室へ、逃げたらしいぞ。」
 みんなは、どやどやと、休憩室へ、なだれこみました。そして、すみずみまで捜しましたが、だれもいません。ポケット小僧は、そこで消えてしまったのです。
 それから長い間、捜索がつづけられました。しかし、どうしても見つけだすことができません。ほんとうに消えてしまったのです。
「ふしぎだ、ふしぎだ。」
と言いながら、部下たちは、みんな、自分の部屋に、ひきあげてしまいました。
 ポケット小僧は、いったい、どこにかくれたのでしょう。それは、休憩室のさっきの花瓶の中でした。そのつぼは、太いところは直径五十センチもありますが、口がせまくなっていて、そこは直径二十センチぐらいなのです。どんな小さい子どもでも、そんな中にはいれるはずはありません。ですから、だれも花瓶の中など調べなかったのです。
 ところが、ポケット小僧は、前に曲芸団にいたことがあって、小さなつぼの中にはいる曲芸をやらされたことがあるのです。頭だけはいる広さがあれば、からだ全体、はいれるものです。むろん辛抱(しんぼう)づよく、練習しなければなりません。ポケット小僧は、その練習をやらされて、つぼの中にかくれる術を、心得ていたのです。
 かれはいつか、奇面城の事件で、四角なカバンの中に身をひそめて、二十面相のすみかに、乗りこんだことがあります。あれも、そういう曲芸を心得ていて、からだを、自由に曲げることができたからです。
 みんながいなくなって、しばらくすると、花瓶の口から、ニューッと手が出て、頭が出て、それから、もう一本の手が出て、ポケット小僧があらわれました。
「フーッ、苦しかった。だが、もう大丈夫だな。」
 台からおりて、グーッと手足をのばしました。そして、大急ぎで黒いふくめんをとり、黒シャツとズボンをぬいで、それを裏返して、また身につけました。シャツの裏は茶色、ズボンの裏はグレーです。いままでの黒んぼとは、似てもにつかない、ふつうのみなりに変わってしまいました。
 黒ふくめんは小さく丸めて、ポケットにねじこみ、チョコチョコと、走って行ったかと思うと、もう、どこかへ、姿が見えなくなってしまいました。
 こうして、朝までかくれていて、月世界の見世物が開くのを待つのです。そして、見物たちが、ここで宇宙服をぬいで、外へ出て行くときに、なにくわぬ顔で、その中にまじって、逃げ出してしまうつもりなのです。

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