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怪指纹:迷宫中的杀人

时间: 2021-08-15    进入日语论坛
核心提示:迷路の殺人 それから間もなくの出来事である。 薄暗い竹藪の、とある細道を、黒い影法師のようなものが、フラフラと歩いていた
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迷路の殺人


 それから間もなくの出来事である。
 薄暗い竹藪の、とある細道を、黒い影法師のようなものが、フラフラと歩いていた。
 よく見ると、そいつは、ぴったりと身についた真黒のシャツを着、真黒のズボン下を穿()き、黒い靴下、黒い手袋、頭も顔もすっぽりと黒布で包んだ、全身黒一色の怪物であった。
 ただ、黒布の目の部分だけが、細くくり抜いてあって、その奥から、鋭い両眼が要心深くあたりを見廻している。無論何者とも判断がつかぬけれど、若しこれが妙子さんを誘拐した犯人の一人とすれば、あの背の高い方の、ガーゼの眼帯を当てていた男に違いない。
 黒い怪物は、宗像博士が警官隊を呼ぶために電話をかけに行ったことも、又、小池助手の指図で、十人余りの小屋の者が、迷路の要所要所に、捜索の網の目を張っていることも、よく知っているに違いない。
 だが、彼は少しも慌てている様子がない。さも自信ありげに、ゆっくりと歩いている。例のクックックッという幽かな笑い声さえ立てながら。
 竹藪の向うのあちこちでは、捜索の人達がガサガサと物音を立てながら、右往左往しているのが、手に取るように聞える。竹の葉をかき分ける音が、前からも(うしろ)からも、右からも左からも聞えて来る。黒い怪物は、今や四方から包囲された形だ。しかも、その包囲陣は徐々に彼の身辺に縮められているのだ。
 怪物は、しかし、まだせせら笑っていた。冗談らしくピョイピョイと飛ぶような恰好をしたりして、(やみ)の中を呑気らしく歩いていた。
 角を曲ると、頭の上に白いものがぶら下っていた。例の首吊り女の幽霊である。
 怪物はそれを見上げて、又クックックッとせせら笑った。黒布で包んだ顔の中から、二つの細い目が、何か陰気なけだものの目のように光っている。この黒い海坊主を見ては、幽霊の方で身震いするかも知れない。
 怪物がそのまま歩き出すと、からくり仕掛けの幽霊は、そのあとを追うように、スーッと舞い下って来た。そして、普通の見物にするのと同じ恰好で、うしろから、彼の黒シャツの肩にしがみついた。
 怪物は予期していたと見えて、少しも驚かなかった。又妙な笑い声を立てながら、そのか細い幽霊人形の手を払いのけようとした。
 だが、どうした事か、幽霊の両手は、いくらふりほどいても、黒い怪物の肩から離れなかった。もがけばもがく程、その手はグングン彼の(くび)をしめつけて来た。
 それは実に異様な光景であった。細い両眼の外は黒一色の影法師の背中に、長い髪の毛をふり乱した、白衣(びゃくえ)の青ざめた女幽霊が、()ぶさるようにしがみついているのだ。暗闇の竹藪の中では、それが滑稽に見えるどころか、何ともえたいの知れぬ奇怪なものに感じられた。現実の出来事というよりは、悪夢の中の突拍子(とっぴょうし)もない光景であった。
 痩せ衰えた女幽霊の余りの力強さに、流石の怪物もギョッとしたらしく、今度は本気になって、力まかせにその手をふりほどこうとあせった。
 だが、幽霊の両手は、愈々力をこめて、頸をしめつけて来る。呼吸(いき)もとまれとしめつけて来る。
「き、貴様ッ……」
 怪物は遂に悲鳴を上げた。うしろにしがみついている奴が、人形ではなくて、生きた人間であることを悟ったのだ。幽霊に化けて、彼の通りかかるのを待ち受けていた、追手の一人であることを悟ったのだ。
 恐ろしい格闘が始まった。女幽霊と海坊主との、死もの狂いの組打である。
 だが、戦いはあっけなく終りをつげた。頸をしめつけられて、力の弱っていた怪物は、たちまち幽霊の為に組み伏せられてしまった。
「オーイ、捕えたぞ。ここだ、ここだ、早く来てくれ」
 幽霊が小池助手の声で呶鳴った。
 ただ追い廻していたのでは、相手は真黒な保護色の怪物だから、急に捉える見込みはないと悟って、咄嗟(とっさ)の機智、彼は首吊り幽霊の衣裳をつけ、長髪の(かつら)を冠って、人形に化けて敵の虚を突いたのであった。
 小池助手は得意であった。博士の留守の間に、早くも怪物を捉えてしまったのだ。残虐飽くなき復讐魔を組み敷いてしまったのだ。それにしても、見かけ程にもない弱い奴だ。一体どんな顔をしているのだろう。
 彼はいきなり覆面の黒布に手をかけて、ビリビリと引き破った。顎が、口が、鼻が、そして目が、次々と現われて来た。薄闇の中とはいえ、接近しているので顔容(かおかたち)が分らぬ程ではない。彼は怪物の顔を見た。はっきりとその素顔を見たのだ。
 一目見るや否や、小池助手の口から、何とも云えぬ恐ろしい叫び声がほとばしった。その調子には、極度の驚きと、何かしら世にも悲痛な響きが(こも)っていた。
「ウヌ、俺の顔を見たな」
 黒い怪物がうめくように云って、組みしかれたまま、クネクネと身体を動かしたかと思うと、闇の中にパッと青い光が(ひら)めいて、バクッと物を裂くような音がした。
 それと同時に、幽霊の胸から、真赤な血のりがポトポトと(したた)り落ちていた。彼は顔の前に垂れ下った長い髪の毛を振り乱して、ウーンとのけぞったが、そのまま(ことき)れて、パッタリうしろに倒れてしまった。
 組みしかれていた黒い怪物は、引裂かれた黒布を元通り顔の前に垂れると、ゆっくりと起き上った。右手には今火を吐いたばかりの小型のピストルを握っている。
「クッ、クッ、クッ……」
 彼は又あの奇妙な笑い声を立てた。そして、可哀想な小池助手の死体を踏み越え、素早く竹藪の向うに姿を隠してしまった。
 それと引違いに、反対の方角から、二人の小屋の者が、息せききって駈けつけて来た。小池助手の恐ろしい叫び声と銃声を聞きつけたからである。
 彼等はそこに女幽霊の転がっているのを見た。不思議なことに、その幽霊の裾からは、二本の足がニューッと突き出していた。胸からは白衣(びゃくえ)を染めて真赤な血が流れ出していた。
 暫くは何が何だか分らず、呆然として立ちつくしていたが、やがて、一人がそれと気附いて、幽霊の長髪をかき分けて見た。
「オイ、これはさっきの探偵さんだぜ。幽霊に化けて曲者を待伏せしていたのかも知れない。アア、もう脈が止まっている。あいつにやられたんだ。あいつはピストルを持っているんだぜ」
 二人は恐怖に耐えぬもののように、竹藪の重なり合った闇の中を見廻した。
「それは一体どうしたというのです」
 見上げると、そこに宗像博士が立っていた。
「あなたのお連れの方が、曲者の為に撃たれたのです」
「エッ、小池君が?」
 博士は咄嗟(とっさ)にそれと察したのか、転がっている幽霊の側に(ひざまず)いた。
「オオ、小池君、この様子では、あいつを見つけて組みついて行ったんだね。そして、こんな目に会ってしまったんだね。
 アア、もう駄目だ、心臓の真中をやられている。よしッ、小池君、この(かたき)はきっと取ってやるよ。君と木島君と二人の仇は俺が必ず討って見せるよ」
 博士は両眼にキラキラと涙の玉を浮べて、小池助手の(しかばね)の前に静かに脱帽するのであった。

    这是其后不久发生的事情。
 
    一个黑色的人影一般的东西在昏暗的竹丛小道上摇摇晃晃地走着。
 
    仔细一看,那家伙是一个全身黑一色的怪物:上身合身的漆黑的衬衣,下穿漆黑裤子,黑皮鞋、黑手套,连头和脸也全用黑布蒙着。
 
    只是黑布的眼睛部分挖着细细的一道缝,一对锐利的眼睛从那里面小心翼翼地环视着四周。当然无法判断那是谁,但如果是诱拐妙子的犯人之一,那么一定是那个个子高的戴着眼罩的家伙。
 
    宗像博士去打电话叫警察的事,以及按小池助手的指示,十几个杂耍场的人在迷宫的各重要地点布下了岗哨的事,黑怪物一定都很清楚。
 
    但他没有一点慌张的样子,似乎很自信似地慢悠悠地走着,甚至一边还呼呼地发出隐隐的笑声。
 
    可以清晰地听到在竹丛的那一头搜索的人们沙沙地发着声响东奔西跑着,前后左右都传来了拨开竹叶的声音。黑色的怪物现在已经被四面包围,而且这包围圈在渐渐地缩到他的身边。
 
    但妖怪还在冷笑。有时像是闹着玩似地做出一副轻轻地蹦跳的样子,在黑暗中悠闲自在地走着。
 
    一拐过拐角,头顶上悬挂着一个白色的东西。是那个女吊死鬼。
 
    妖怪抬头看了它一眼,又呼呼地冷笑了几下。用黑布蒙着的脸中,只是两只小眼睛像是阴森可怕的兽眼似地闪着光芒。见了这秃头海怪,也许幽灵自己都会发抖。
 
    妖怪径直走去,自动装置的幽灵突然像是追踪似的刷地从上面飞舞下来,随后又以对普通游客做的一样的姿势从后面紧紧地抓住了他的黑衬衣的肩。
 
    妖怪似乎是早已预料到了,一点也不惊慌,它又一面发出奇怪的笑声,一面想拔掉那幽灵偶人的细细的手。
 
    可是不知怎么搞的,无论怎么挣脱,幽灵的双手都不离黑妖怪的肩,越挣扎那手就越一个劲儿地勒紧他的脖子。
 
    这情景实在奇异。披头散发、面色苍白、身穿白衣的幽灵像是被背着似的紧紧地搂着除了小小的双眼以外其余全是黑色的人影的背。在黑暗的竹丛中,这看上去岂止是滑稽,甚至离奇古怪。与其说这是现实的事,不如说是噩梦中越出常轨的情景。
 
    由于这瘦弱的女鬼力气过大,连妖怪好像大吃一惊。这回是真格儿地使尽力气急着想挣脱那手。
 
    可是幽灵的双手越发使劲勒住他的脖子,连气都快喘不过来了。
 
    “你、你这个东西!……”
 
    妖怪终于发出惨叫,他觉察到在后面紧搂着他不放的家伙不是偶人,而是活人。
 
    可怕的格斗开始了。这一场女鬼与秃头海怪之间的殊死搏斗。
 
    可是,战斗一下子宣告结束了。被勒着脖子,体力衰弱的怪物立即被幽灵捆住了。
 
    “喂——,逮住啦!在这儿,在这儿,快来呀!”
 
    幽灵是小池助手的声音。
 
    觉察到对方是个蒙着漆黑的保护色的妖怪,只是来回追赶的话不可能马上逮住他,所以小池助手灵机一动,穿上吊死鬼的衣裳,戴上长假发,装成偶人出其不意地攻击了敌人。
 
    小池助手得意到了极点。在博士不在期间,这么快就逮住了妖怪,把这个惨无人道的复仇魔鬼压在了自己身体底下。不过这家伙不像表面看上去的那样有劲。究竟是一副什么样的嘴脸呢?
 
 
 
 
    他冷不防把手放在覆面黑布上,哗哗地把它撕破了,下巴、嘴、鼻子以及眼睛陆陆续续露了出来,虽说是在昏暗中,但因为离得很近,所以不至于看不清脸相。他看了看妖怪的脸。刚看一眼,小池助手便从嘴里迸发出了难以形容的可怕的叫喊声。那声音里充满着极度的惊慌和万分的悲痛。
 
    “哦,看到我的脸啦。”
 
    黑色的怪物呻吟般地说道,刚扭动了一下被压着的身体,黑暗中突然啪地闪出一道蓝光,响起了撕裂东西般的声音。
 
    与此同时,从幽灵的胸前滴滴答答地滴下了殷红的鲜血。小池被散着耷拉在脸前的黑发,用力向后仰了一下,就那样咽了气,突然向后倒了下去。
 
    被压在下面黑色怪物让被撕裂的黑布照原样搭拉在脸前,随后慢吞吞地爬了起来,右手里握着刚喷出火的小型手枪。
 
    他又呼味地发出了奇怪的笑声,并迈过可怜的小池助手的尸体,迅速躲进了竹丛的对面。
 
    他刚离开,从相反方向就气喘吁吁地跑来了两个杂耍场的人,因为他们听到了小池助手的可怕的喊声和枪声。
 
    他们看到那女鬼躺在那里。奇怪的是从那幽灵的衣服下摆伸出两条腿,从胳膊上流出殷红的血,白衣都染红了。
 
    他们一时不知道是怎么回事,呆若水鸡地位立在那里。过了一会儿,其中一人才醒悟过来,拨开幽灵的长发看了一下。
 
    “喂,这是刚才的那个侦探呀!说不定他装成鬼在这儿伏击那可疑的家伙。哎呀,脉搏已经停止了,是被那家伙杀了,那家伙有手枪!”
 
    两人禁不住恐怖地朝四周黑洞洞的竹丛看了一下。
 
    “这到底是怎么搞的?”
 
    抬头一看,那里站着宗像博士。
 
    “您的同伙被可疑的家伙打中了。”
 
    “啊?!是小池君?”
 
    或许是一下子察觉到这一点,博士蹲到躺在地上的幽灵身旁。
 
    “喂,小池君!看样子他发现那家伙后拖了上去,因而遭到了这种不幸。啊,已经不行了,被打中了心脏的正中间。好,小池君,这仇我一定替你报!你和木岛君两人的仇我一定替你们报!”
 
    博士眼睛里噙着晶莹的泪水,默默地在小池助手的遗体前脱下了帽子。
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