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透明怪人-真正的罪犯

时间: 2021-11-14    进入日语论坛
核心提示:真犯人 明智の話はつづきます。「いったい、なんのために、ありもしない透明人間を、あるようにみせかけたか。それは、ひとつに
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真犯人


 明智の話はつづきます。
「いったい、なんのために、ありもしない透明人間を、あるようにみせかけたか。それは、ひとつには、宝石だとか、いろいろの高価なものをぬすむためです。透明怪人という、お化けのようなやつが、犯人だと思わせておけば、ほんとうの犯人は、うたがわれないで、すむからです。
 しかし、それだけではありません。この犯人は、せけんの人をビックリさせたかったのです。子どもが、しょうじのかげに、かくれていて、むこうから来た人を、バアと言っておどかす、あの気持ちを大きくしたようなものです。東京じゅう、日本じゅうの人を、バアと言って、おどかしたかったのですね。透明怪人という化けものが、ほんとうに、この世にあらわれ、それが、何十人、何百人と、だんだんふえていくぞと、みんなをビクビクさせて、よろこんでいたのですね。
 それから、もうひとつは、ぼくを――この明智小五郎を、アッと言わせたかったのです。ぼくと文代と小林君までも、透明人間にしてしまうぞと、おどかしたうえ、ほんとうに、ぼくたちを、さらっていって、せけんの人に、さすがの名探偵も、とうとう透明人間にされてしまったと、思わせたかったのです。
 怪老人がぼくの事務所へ電話をかけてきたときに、ぼくはあいつのおそろしい決心をさとりました。そこで、ぼくの、とっておきの手をもちいたのです。それは、ぼくと文代のかえだまを、探偵事務所にすまわせ、ほんもののぼくと文代は、せけんから、すがたを、かくしてしまうという方法でした。
 中村君はよく知っていますが、ぼくはずっとまえの事件で、自分のかえだまをつかったことがあります。そのころから、ぼくと顔かたちがソックリの人を、さがしだして、ひみつの場所に、すまわせてあったのです。こんども、そのおなじ人を、つかいました。
 まえの事件のときには、文代のかえだまは、まだ、なかったのですが、そののち、たえず気をつけていて、とうとう、文代とソックリの人を見つけました。この女も、やはり、ひみつの場所に、やしなってあったのです。
 ぼくの探偵事務所の、いちばんおくの部屋に、ひみつの通路があります。かべのいちぶぶんが、電気じかけのガンドウがえしになっているのです。ぼくと文代は、怪老人のおどかしの電話をきいたあとで、そのひみつの通路から、ぬけだし、ふたりのかえだまと、いれかわってしまいました。
 ですから、自動車でさらわれた明智は、そのかえだまのほうだったのです。また、ゆうべ黒川と、にせの中村係長に、つれだされた文代も、かえだまのほうでした。小林君にたすけられて、いまここにいる文代は、ほんとうの文代ではありません。ぼくの妻の文代は、だれも知らない、安全な場所にかくれているのです。」
 明智の話は、聞けばきくほど、いがいなことばかりで、部屋にいる人々は、息をつくひまもありません。あまりのことに、あきれはてて、ポカンと口をあけて、明智の顔を、みつめているばかりです。
「そうしておいて、ほんとうのぼくは、怪老人のすみかを、さがしあて、コックに化けて、すみこんでいたのです。かえだまをさらっていって、安心した犯人には、そこに大きなゆだんがありました。犯人は、人もあろうに、このぼくに、自分のかえだまになれと、命じたのです。
 犯人も、さるものです。やっぱり、ぼくとおなじようなことを、考え、かえだまをつかって、警察をあざむこうとしたのです。
 ぼくを怪老人に化けさせ、わざと、とらえられて警察を安心させたうえ、いよいよ、おそろしいことをたくらもうとしたのです。
 では、かえだまのぼくと、いれかわった、ほんとうの怪老人はどうしたのでしょう。もとの黒川記者にもどったのでしょうか。いや、そうではありません。世界じゅうで、いちばんうたがわれない人物、すなわち、探偵に化けたのです。明智はとりこにしてしまったと、思いこんでいる犯人は、自分が明智に化けて、警察に、ひとあわ、ふかせようとしたのです。つまり、ゆうべ、焼けビルの樋をつたいおりて、わざとパトロールの警官に発見された明智こそ、犯人が化けたものです。」
 それをきくと、人々の目が、いっせいに、一方のイスにしばられている明智を、にらみつけました。ほんとうの明智小五郎のために、おまえが犯人だと、きめつけられた、にせ明智は、まっさおになって、うなだれていました。かれが真犯人であることは、それを見ただけでも、あきらかです。
 ほんとうの明智は、にせ明智の、しおれたようすを、こきみよげに、ながめながら、さらに、ことばをつづけました。
「黒川記者になり、怪老人に化け、いまはまた、明智に化け、しかも、このぼくと、どこから見ても、くべつができないほど、うまく化けています。この犯人は、じつに変装の大名人ではありませんか。
 明智をアッと言わせ、明智をとりこにして、よろこぶ犯人、この明智に、それほど、ふかいうらみを、いだいているやつ――、いくつ顔を持っているのだろうと、あやしまれるほどの、変装の名人。みなさん、この二つのことから、何者かを、思いだされはしないでしょうか。」
 明智は、グルッと、人々の顔を見まわしました。みんなの目が、飛びだしそうに、見ひらかれています。みんなが石にでもなったように、身うごきするものもありません。
「おわかりになりましたね。そうです。老怪人に化け、明智に化けた黒川記者、その黒川もほんとうのかれではなかったのです。ぼくはかれの本名を知りません。一年あまりまえ、『虎の牙』の事件で、魔法博士として、とらえられた人物、すなわち、怪人二十面相です。みなさん、そのイスにしばられているのがあのおそるべき大悪魔、怪人二十面相なのです。
『虎の牙』の事件で、とらえられた数日後、かれはもう、とくいの(ろう)やぶりで、すがたを消していました。そして、東洋新聞の黒川記者となって、ぼくへの遠大(えんだい)なふくしゅうを、けいかくしていたのです。
 捜査課長さん、あらためて、凶賊二十面相を、ひきわたします。こんどこそ、逃がさないように、万全のしゅだんをこうじてください。」
 明智のことばが、きれるかきれないうちに、ワッと言う声が、部屋じゅうに、ひびきわたり、課長、係長、刑事、小林少年、少年探偵団員、あわせて十人の人々が、イスにしばられた、にせ明智のまわりに、殺到していました。
 そのいきおいに、犯人のしばられたイスがたおれ、怪人二十面相は、ぶざまなかっこうで、ゆかにころがっていました。さすがの魔術師も、こうなっては、もう、どうすることもできません。まっさおな顔にあぶらあせをながし、くちびるを、かみしめて、死人のように、よこたわっているばかりです。
 かくして、あれほど、せけんをさわがせた、透明怪人の大事件も、ついにさいごの幕をとじることになりました。これよりして、名探偵明智小五郎と名助手小林少年の評判が、いよいよ高くなったことは、言うまでもありません。しばらくは、どこへいっても、ふたりのてがらばなしばかりでした。

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