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塔上的奇术师-两次化装

时间: 2022-01-15    进入日语论坛
核心提示:変装から変装へ こうもり男のとびおりた、塀の外の道路は、一方は淡谷邸のコンクリート塀、一方は、草のしげった原っぱになって
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変装から変装へ


 こうもり男のとびおりた、塀の外の道路は、一方は淡谷邸のコンクリート塀、一方は、草のしげった原っぱになっていました。その原っぱには、ところどころに立ち木があり、ひくい木のしげみなどもあるのです。
 こうもり男は、その一つのしげみの中へ、サッとすがたをかくしましたが、ほんの一分もたったかたたないうちに、そのしげみから、ひとりのじいさんが、ヌウッとあらわれました。
 きたない鳥打ち帽をかぶり、ぼろぼろのオーバーをきて、首にえりまきをまきつけた、六十ちかいじいさんです。首からひもで手さげ電灯をむねの前にさげ、拍子木(ひょうしぎ)のひもも首にかけています。町内の夜まわりのじいさんらしく見えます。
 これは、いうまでもなく、四十面相の変装でした。そのしげみの中に、まえもって、変装の服などがかくしてあったのでしょう。なにしろ変装の名人のことですから、またたくまに、こうもり男から、火の番のじいさんに化けてしまったのです。
 その時、淡谷邸の表門のほうから、三人の刑事がかけだしてきて、そのへんを、キョロキョロとさがしまわっています。
 じいさんに化けた四十面相は、原っぱのはずれまでいって、そこから道路に出ると、刑事たちのほうへ近づいていきました。
「火のようじん……。」
 ちょんちょんと、拍子木をうって、のろのろと歩いていきます。
「おい、じいさん。いまここへ、黒いマントを着たやつがとびおりたんだが、見なかったかね。」
 刑事のひとりが、あわただしく、たずねました。
「エッ、黒いマントですって?」
 じいさんは、立ちどまって、びっくりしたように聞きかえしました。声まで、しわがれたじいさんの声になっています。
「うん。四十面相という大泥坊だ。この塀の外へとびおりたんだよ。黒いシャツの上に黒マントをきた、こうもりみたいなやつだ。見なかったかね。」
「アッ、それじゃあ、いまのやつだ。そうですよ、マントをひらひらさせて走っていきましたよ。あっちです。あっちのほうへ、飛ぶように走っていきました。」
 夜まわりのじいさんは、はるかうしろのほうを指さして、まことしやかに答えるのです。
「よしっ、あっちだなッ。すぐ追っかけよう。」
 刑事たちは、そのまま、じいさんの指さしたほうへ、ばたばたとかけさってしまいました。
 それを見おくって、じいさんは、にやりと笑いました。手ばやい変装が、みごとに(こう)をそうしたのです。
 しかし、まだゆだんはできません。刑事たちが、とちゅうで気づいて、ひきかえしてきたらたいへんです。
 じいさんは、あたりを見まわしてから、また、原っぱへかけこんで、さっきのしげみの中へ身をかくしました。
 そこには、ぬぎすてたマントや、角のはえたかつらや、もう一つ、べつの変装服などといっしょに、ぬすみだした宝石ばこのふろしきづつみも、かくしてありました。
 四十面相は、また、手ばやくじいさんの変装をといて、べつの服を着こみ、そこにあった、絵のぐ箱をひらいて、顔をつくりなおしました。
 こんど、しげみから立ちあらわれたのは、りっぱな背広に、オーバーを着て、ソフトをかぶった紳士でした。しゃれためがねをかけ、口ひげをはやしています。
 紳士は、むらさき色のふろしきづつみをこわきにかかえて、道路に出ると、刑事たちが走っていったのとは反対のほうへいそぎ、にぎやかな大通りにくると、タクシーをよんで、そのまま、どこともしれず、ゆくえをくらましてしまいました。

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