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妖怪博士-BD徽章

时间: 2021-10-25    进入日语论坛
核心提示:不思議な盗賊 その晩七時ごろ、泰二少年は、なにごともなかったように、おうちに帰ってきました。 おかあさまが、「泰ちゃん、
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BDバッジ


「泰ちゃん、しっかりおし、おまえ夢でもみたんじゃないの? それ、なんだと思っていますの? おとうさまのたいせつなたいせつな書類じゃありませんか。さ、お返しなさい。それが悪い人の手にわたったら、それこそたいへんなんだから。」
しかし、催眠術の魔力によって、別人のようになった泰二君は、おかあさまを見むきもしなければ、そのことばを聞こうともせず、おしのけるようにして、グングン廊下の向こうへ立ちさろうとします。
「これ、泰ちゃん、泰ちゃんたら!」おかあさまは、パジャマのそでをつかんで、ひきとめようとなさいましたが、泰二君はそれをはげしい勢いではらいのけると、ヒョイとふりかえって、ゾッとするほどおそろしい顔で、おかあさまをにらみつけました。
おかあさまは、それをごらんになると、わが子ながら、その形相ぎょうそうのおそろしさに、思わず立ちすくんでおしまいになりました。なんだかいつもの泰二君と、まったくちがった人のように見えたからです。ひょっとしたら、催眠術をかけている蛭田博士のたましいが、泰二君に乗りうつって、顔までもあのぶきみな蛭田博士と、そっくりになっていたのかもしれません。
あまりのおそろしさ悲しさに、おかあさまがためらっていらっしゃるあいだに、泰二君は廊下の窓に近づくと、手早く掛け金をはずして、ガラス窓をひらき、アッと思うまに、外の暗やみへとびだしていってしまいました。それは、人間わざとは思われぬほどのす早さでした。一ぴきの大きな大きなコウモリが、サッと目をかすめてとんでいったような、なんともいえぬものおそろしい感じでした。
おかあさまは、そのままたおれてしまうほどの、はげしい胸さわぎをじっとこらえて、ヨロヨロと窓に近づき、まっくらな広い庭を、すかすようにして、のぞいてごらんになりました。
すると、大入道のような大樹たいじゅがムクムクとしげっているやみの中を、大小二つの人影が、物ののように走りさっていくのがながめられました。
小さいほうの黒い影が泰二君であることはわかっていますが、もう一つの大きい人影は、いったい何者でしょう。おかあさまは少しもごぞんじなかったのですけれど、それはあの蛭田博士なのでした。
博士はいつのまにか、相川邸の庭園にしのびこんで、泰二君がしゅびよく目的をはたすかどうかを、窓の外の暗やみから、リンのように光るおそろしい目で、じっと見まもっていたのでした。
泰二君が書類をぬすみだしますと、博士はその眼光をいっそうするどくし、催眠術の念力ねんりきを強めて、泰二君に窓の外へ逃げだすようにと、無言の命令を伝えたのです。そして、とびだしてくる泰二君の手をとると、おそろしい勢いでやみの中をグングン走りだし、あらかじめあけておいた裏口から、どことも知れず逃げさってしまったのです。
蛭田博士は、泰二君のおとうさまのたいせつな書類を手に入れたら、もう泰二君に用はないはずではありませんか。書類だけ受けとって逃げだせばよいはずではありませんか。
しかし博士は泰二君の手をはなそうともしなかったのです。またしても、泰二君をどこかへ連れさってしまったのです。いったいこれは、どんな意味があったのでしょうか。
それはともかく、このふしぎなありさまをごらんになった、おかあさまのおどろきは申すまでもありません。けたたましいさけび声をたてて、救いをお求めになったものですから、召し使いたちも起きてきますし、それから近所の人が集まってくる、電話の訴えによって、数名の警官がかけつけてくるという大さわぎになりました。
そして、その夜中から朝にかけて、げんじゅうな捜索がおこなわれたのですが、泰二君が、何者によって、どこへ連れさられたのか、想像さえつきませんでした。
庭のやわらかい土の上に、泰二君のはだしの足あととならんで、おとなの靴のあとが、点々として残っていました。それによっても、何者かが泰二君を連れさったことはあきらかですが、泰二君は蛭田博士邸でおそろしいめにあったことを、おかあさまにもうちあけなかったものですから、その靴あとのぬしが何者であるか、だれにもまったく見当さえつきませんでした。
翌日のお昼すぎには、泰二君のおとうさまが、電報の通知を受けとって、とるものもとりあえず、関西の出張先から、特急こだまでお帰りになる、おとうさまの会社では緊急幹部会議をひらいて、重要書類紛失の善後策をこうじる。この犯人捜索には、警視庁管下の全警察をあげてあたるという、ものものしい大事件になってしまいました。その日の夕刊には、泰二君のふしぎな家出を大きく報道し、この事件のかげにはおそるべきスパイの魔手ましゅがおどっているのではないかなどと、書きたてましたので、泰二君の学校友だちにも、たちまちこのことが知れわたりました。
受け持ちの先生はもちろん、同じクラスのお友だちは、みなひじょうにおどろいて、泰二君の身のうえを心配しましたが、中にも胸をさわがせたのは、大野おおの君、斎藤さいとう君、上村かみむら君という三人の少年探偵団員でした。
少年探偵団というのは、名探偵明智小五郎の少年助手小林芳雄君を団長にいただき、冒険ずきな十人の少年たちが組織している団体なのですが、その団員は、中学の一年生が三人、小学校の五年生がひとり、あとの六人は小学校の六年生ばかりで、学校もいろいろにわかれているのですが、泰二君の小学校には、泰二君のほかに、今いった三人の団員がいたのです。
その三人の少年は、事故の翌々日、学校がひけますと、申しあわせて、相川君のおうちをお見舞いしました。そして、おかあさまから、その夜の泰二君のふしぎなようすや、庭のおそろしい人影のことや、警察でいっしょうけんめい捜索しているのだけれども、まだ、なんの手がかりもえられないことなどを聞いて、ますます胸をいためながら、相川邸の門を出たのでした。
三人は電車道のほうへと、肩をならべて歩きながら、このふしぎな事件について、ヒソヒソと語りあいました。
「いったいどうしたっていうんだろうね。相川君がそんな泥棒をはたらくわけがないんだから、きっと悪者におどかされたんだぜ。書類をぬすみださなければ、殺してしまうとかなんとか。」上村君が考えぶかく口を切りました。
「ウン、そうにきまっているさ。だが、その黒い影みたいなやつって、いったい何者だろうね。スパイにはちがいないんだけれど。」と、大野君が、小首こくびをかしげました。
「ぼくは日本人じゃないと思うよ。そいつ、きっと外国人にちがいないよ。」と、これは斎藤君です。スパイといえば、だれしもまず外国人を思いうかべるのが人情でした。
「おい、これからみんなで、明智先生の事務所へ行ってみないか。小林さんに会って、相談すれば、何かうまい考えがあるかもしれないぜ。」上村君がふと思いついて、さけぶようにいいました。
「ウン、そうしよう。小林さんも、ぼくたちにあいたがっているかもしれないよ。」斎藤君が、賛成しますと、大野君も、
「それがいい、それがいい。」と同意を表しました。
明智探偵事務所は、同じ麻布の竜土町りゅうどちょうにあるのですから、歩いていってもわけはありません。
そこで、いよいよ少年探偵団長の小林君をたずねることにきめて、三人が足を早めたときでした。うしろから、だれかが追っかけるように近づいてきて、とつぜん三人に声をかけました。
「ちょっと、きみたち相川泰二君のお友だちでしょう。そして、少年探偵団の団員でしょう。」
びっくりしてふりむきますと、すぐうしろに、三十四、五歳の自動車の運転手みたいな人が立っていました。会社の制服を着て、大きな金モールの記章のついた運転手帽をかぶって、にこにこと笑っているのです。
「ええ、そうです。何かご用ですか。」立ちどまって聞きかえしますと、運転手は右のてのひらに何かのせて、三人の目の前にさしだしながら、
「これ、きみたちの探偵団の記章じゃありませんか。」と、たずねるのです。
見れば、いかにもそれは、少年探偵団のBDバッジでした。
BDバッジというのは、小説「少年探偵団」をお読みになった方はごぞんじでしょうが、小林君の考案で、「少年」と「探偵」にあたる英語の頭字かしらじBとDとの組み合わせ文字で、百円銀貨ほどの大きさのなまりのメダルをたくさんこしらえさせ、団員が、めいめい三十枚ずつほど持っている、団員記章のようなものでした。
記章ならみんなが一つずつ持っていればよさそうなものですが、それを二十枚も三十枚も用意しているのにはわけがあったのです。団員のひとりがほかの団員に、ある場所を知らせようとするときに、その道すじのところどころへバッジを落としておけば、キラキラ銀色に光っているのですから、じゅうぶん目印になるのです。
げんに小林君が怪人二十面相のためにとりこにされ、おそろしい水責めにあったとき、このバッジのおかげで、そのゆくえがわかり、ぶじに救われたという事実さえあるのです。そのバッジを、見知らぬ自動車運転手が持っているのを見ますと、三人は思わず顔を見あわせました。
「ええ、それBDバッジっていうんです。ぼくたちの記章です。あなたはどうしてそれを持っているんですか。」
上村君がうたがわしげにたずねますと、みょうな運転手はにこにこして答えました。
「拾ったんですよ。」
「エッ、拾ったって? どこで?」
「このへんじゃありません。ずっと遠いところです。だから、きみたちが落としたのを拾ったわけではないのですよ。」
「遠いところって?」
「麻布ですがね、ぼくも町の名ははっきり知らない。行けばわかるんだけど。」
「じゃ、今でも、これの落ちていたところを、ちゃんとおぼえているんですね。」
「ええ、おぼえてますとも、みょうな赤れんがの洋館の前でしたよ。」
それを聞くと、三人の少年たちは、また意味ありげに、目と目を見かわすのでした。

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