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妖怪博士-二十面相的末日

时间: 2021-10-26    进入日语论坛
核心提示:二十面相の最後「勝ったぞ、勝ったぞ。うらみかさなる明智のやつを、とうとう生きうめにしてしまった。ああ、おれは生まれてから
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二十面相の最後


「勝ったぞ、勝ったぞ。うらみかさなる明智のやつを、とうとう生きうめにしてしまった。ああ、おれは生まれてから、こんなにせいせいしたことはない。もうこれからはおれの天下だぞ。思うさまあばれてやるんだ。」
 二十面相は、懐中電灯を消して、かって知ったやみの迷路を、入り口のほうへ急ぎながら、ゆかいでたまらないというように、声に出してつぶやくのでした。
 ですが、あの板の橋をとりはずした大穴を、どうしてこすつもりなのでしょう。そこを通らなければ、洞くつの外へ出られないではありませんか。ところが、二十面相は大穴から十メートルほどてまえまで来ますと、ひょいと立ちどまって、懐中電灯をつけ、そこの岩はだを照らしました。
「フフン、こんなしかけがあろうとは、いくら名探偵でも気がつくまいて。よしよしここだ、これがおれのほかにはだれも知らない目印だ。」
 二十面相は懐中電灯を地面において、そこにうずくまり、岩と岩の間のせまいすきまに、右手をさし入れて、何かしたかと思いますと、これは、どうでしょう。そのそばの大きな岩のかたまりが、音もなく、まるでドアでもあくように、スーッと動いて、そのあとに、五十センチ四ほうほどの不規則な穴が、ポッカリと口をあけたではありませんか。秘密の通路なのです。それは、ちょっと見たのでは、岩はだのほかの部分と少しもちがわないのですが、じつは、セメントをかためて色をつけた秘密のとびらだったのです。
 二十面相はその穴の中へはいりこんで、セメントのとびらをもとのとおりにしめておいて、まるでモグラのように、せまいまっくらな穴を十五、六メートルはいすすみました。そして、その行きどまりまで来ますと、またそこの秘密のしかけをはずして、同じようなコンクリートのとびらをひらき、穴の外にはいだして、またそのとびらをもとのようにしめました。これが例の井戸のような大穴をこさないで入り口に出られる、秘密のぬけ道だったのです。
 穴をはいだしたといっても、穴の外もやっぱり洞くつの中の迷路の一部です。二十面相は着物の土をはらって、懐中電灯を照らしながら、その細い道を、入り口のほうへと歩きだしました。
 ところが、そうして五、六歩も進んだかと思いますと、何を見たのか、二十面相はギョッとしたように立ちどまり、懐中電灯を行く手のやみにさしむけました。おお、これはなんとしたことでしょう。夢ではないのでしょうか。そこにはひとりの人物が、じっとこちらをにらみつけて、腕組みをしてつっ立っていたのです。読者諸君。それがだれだったと思います。意外も意外、その異様な人物こそわれらの名探偵明智小五郎だったのです。
 二十面相はあっけにとられて、しばらくあいた口がふさがらず、まるであほうのような顔をして立ちすくんでいました。まったく不可能なことがおこなわれたのです。二十面相はつい今しがた、明智探偵をあの広い洞くつに置きざりにしてきたばかりではありませんか。あの洞くつからここへ来るのには、橋のない大穴の上を、鳥のようにとびこすか、今の秘密の通路を通るほかないのですが、そのどちらも人間わざではできないことです。大穴は(つばさ)でもはえていないかぎり、どんな幅とびの選手だってとびこせないほど広いのですし、いっぽうの秘密の通路のコンクリートのとびらのひらき方は、二十面相のほかにはだれも知らないことです。だいいち、通路の入り口がどこにあるかさえ、ほかの人にはわからないはずです。
 ではいったい明智探偵は、どこをどうして、ここへ先まわりしていたのでしょう。まるで魔法使いではありませんか。二十面相は考えているうちに、心の底からこわくなってきました。目の前にニコニコしてつっ立っている名探偵の姿が、何か幽霊ででもあるように、おそろしく思われてきました。
 ごらんなさい。二十面相の懐中電灯を持つ手が、ぶるぶるふるえているではありませんか。それにつれて、明智探偵を照らす、まるい光が動くものですから、探偵の姿まで、いかにも幽霊のように、ふわふわとゆれて見えるのです。
「き、きさま、あ、あ、明智だな。」二十面相は虚勢(きょせい)をはって、大きな声でどなりつけました。しかし、おびえきっているしょうこには、その声がひどくふるえているのです。
「ハハハ……、ぼくは明智だよ。どうかしたのかね。きみはひどくおどろいているようだね。何をそんなにびっくりしているんだね。え、二十面相君。」明智探偵は腕組みをしたまま、一歩前に進んで、あざけるように怪盗の顔を見つめました。
「お、おどろいてなんぞいるものか。だが、き、きさま、ここへどうしてやってきたんだ。」
「どうしてって、入り口からはいってきたのさ。それがどうかしたのかね。」明智はさもゆかいらしく、またニコニコと笑いました。
「エッ、入り口からだって? ば、ばかな。そんなことがあるもんか。おれは、きさまを一生涯出られない場所へ、とじこめておいたはずだ。」
「とじこめられているのは、ほかのだれかだろうよ。ぼくは今ここへはいってきたばかりなんだからね。」
「そ、そんなばかなことはない。おれはたしかにきさまを……。」二十面相は、とびだすばかりに見ひらいた目で明智探偵の顔を穴のあくほどにらみつけました。しかし、けっしてにせ者ではありません。正真正銘(しょうめい)の明智小五郎にちがいないのです。
「ハハハ……、めんくらっているね。ゆかいゆかい、魔法使いといわれる二十面相が、きょうはぼくの魔法にかかったのだからね。ハハハ……、こんなゆかいなことはないよ。エッ、ぼくがにせ者だというのかね。ハハハ……、にせ者はぼくではなくて、この奥にとじこめられている男だよ。」
「え、え、なんだって?」二十面相は、ほんとうにめんくらってしまって、なにがなんだかわからないようです。
「きみが明智小五郎だと信じて、洞くつの奥へとじこめた男がにせ者だというのさ。」
「そんなことはない。いくら洞くつの中が暗いからって、にせ者にだまされるようなおれじゃない。だいいち、あの男とはおれの家で話をしたのだし、おれの家から洞くつの入り口まで、肩をならべて歩いて、太陽の光でよく顔を見ておいたのだから、まちがいはない。あいつはたしかに明智小五郎だった。」二十面相は半分はひとりごとのようにつぶやいて、まだ、ふにおちぬていです。キツネにつままれたとは、きっとこんな心持ちをいうのでしょう。
「ハハハ……、さすがの二十面相も、きょうは少し頭がにぶいようだね。わからなければ説明してあげよう。いいかね。ぼくは少年探偵団の子どもたちがゆくえ不明になったと聞いたとき、すぐさまきみのことを思いだした。これは、二十面相のしわざにちがいないと考えた。
 二十面相はこの鍾乳洞の付近に、だれも気づかぬ人物に変装して、住んでいるのかもしれない。そして子どもたちを鍾乳洞の中へおびきよせ、道にまよわせて、出られなくしてしまったのかもしれないと思った。そこでぼくは警察とも打ちあわせたうえ、ぼくとよく似た体格の男をつれてここへやってきたのだ。その男にはぼくとまったく同じ服装をさせ、それをかくすために大きな将校マントを着せて、ぼくのあとから、人に気づかれぬよう、そっとついて、くるように命じておいた。
 いいかね。そして、ここへやってきて、第一にぼくの目をひいたのは、きみの小屋だ。鍾乳洞案内人のじいさんの小屋だ。ぼくはすぐさま、この小屋へはいっていって、きみにあった。あって話をしてみると、ことばのはしはしに、なんとなくあやしいところがある。ひじょうにじょうずに変装しているけれど、きみの顔にはどこかしら不自然なところがある。ぼくは、ハハアこれだなとさとったのだ。そこで、何くわぬ顔できみに案内をたのんで、鍾乳洞の入り口から少しはいったところまでは、たしかにこのぼくが同行した。
 だが、きみは少しも気づかなかったけれど、そのとき、ぼくたちふたりのあとをまっ黒な人影がソッと尾行していたのだ。ほかでもない、ぼくがつれてきた替え玉の男だよ。それがぼくと同じ服装をかくすために、頭からスッポリ将校マントをかぶって、ぼくたちのあとへついてきたのだ。
 きみはおぼえているかね。穴をはいってまもなく、ぼくが岩かどにつまずいて、懐中電灯を取りおとしたのを。うん、そうだよ。あのときほんのしばらくのあいだ、懐中電灯が消えて、あたりがまっくらになってしまったね。むろんわざとしたことさ。このぼくが不注意でつまずいたりするものか。きみの目をくらます策略だったのさ。その暗やみを利用して、すぐあとからついてきていた替え玉の男と、すばやく入れかわったのだよ。ぼくはその男の将校マントを持って、コッソリ穴の外へ逃げだす。あとに残ったその男は、落ちた懐中電灯を拾いあげ、ぼくの声をまねて、『大じょうぶ』とか、なんとかいったのさ。
 ハハハ……、わかったかね。種あかしをしてしまえばなんでもないことだが、二十面相ともあろうものが、この手品にまんまといっぱいかかったんだからね。そしてその替え玉をぼくと信じきって洞くつの奥へとじこめ、とくいになって出てくるところへ、ほんもののぼくがこうしてあらわれたというわけさ。」
 目の前の明智探偵が、幽霊でも魔法使いでもなく、ただ子どもだましの手品を使ったばかりだということがわかりますと、二十面相はにわかに元気をとりもどしました。もうこわいこともおそろしいこともありません。相手は自分と同じ人間なのです。しかもひとりとひとりの争いです。
「フフン、明智先生にしては感心な手をもちいたね。おれは、まんまと、いっぱいひっかかるところだったぜ。しかし、そう種あかしを聞いてしまえば、もうこっちのものだ。ウフフフ……、やい、明智、手をあげろ、それとも、この鉛の弾丸(たま)が食らいたいのか。」
 にわかに強くなった二十面相は、おそろしいけんまくで、どなりながらピストルをかまえました。明智探偵は、ピストルを取りだすでもなく、まだ腕組みをしたままです。ああ、またしても賊のために先手を打たれたのではないでしょうか。しかし、ほんものの明智探偵は替え玉のようにうろたえませんでした。二十面相のおどかしを、どこを風が吹くかと、聞きながして、いつものとおりニコニコ笑っています。
「やい、このピストルが見えないのか。手をあげろ、手を。」二十面相がくりかえしてどなりつけますと、明智はやっと、静かな声で答えました。
「手をあげるのはきみのほうだよ。ちょっとうしろを見てごらん。」
 その声があまりおだやかだったものですから、かえって二十面相はギョッとして、思わずうしろをふりむきますと、おお、いつのまにこんな用意ができていたのでしょう。そこには三人の制服警官がせまい通路いっぱいになって、手に手にピストルをかまえていたではありませんか。
 さすがの二十面相も、この不意うちには、あっと仰天(ぎょうてん)して、やにわに明智をつきのけて、出口のほうへかけだそうとしますと、その出口のほうからも、数名の警官が、同じようにピストルを持って、ひしひしとつめかけてくるのです。二十面相は、今や絶体絶命でした。でも、さすがに希代の怪盗です。そのままなんの抵抗もせずとらえられるようなことはしませんでした。彼はどこをどう逃げたのか、やみにまぎれて姿をかくし、すばやくれいの大コウモリの怪獣に変装して、警官たちをおびやかしながら、暗やみの迷路のなかを右に左にかけまわりました。
 警官隊は十五人、そのうちの五人が洞くつの入り口に見はり番をつとめているのですから、いかな二十面相も、それを突きやぶって外へ逃げだすことはできません。ただ、広い洞くつ内を右往左往するばかりです。
 世にも奇怪な鍾乳洞の大捕り物でした。
 それから一時間あまりのあいだ、暗黒の洞くつ内に、どんなおそろしい争いが演じられたか。それは読者諸君のゆたかな想像力におまかせしましょう。諸君はこれまでごらんになった映画などの、もっともおそろしい乱闘の場面を頭にえがいてくださればいいのです。しかも、それが暗黒の洞くつの中でおこなわれた、六ぴきの大コウモリと十人の警官隊と、明智探偵のほかに十一人の少年たちも加わった大闘争なのです。
 さて、その結果がどちらの勝利となったかは、読者諸君もじゅうぶんお察しのことと思います。明智探偵の味方は総勢二十三人、敵はわずかに六人です。味方は洞くつ内の案内を知らないという不利な点がありましたけれど、捕り物には熟練(じゅくれん)したおまわりさんたちです。いかに、賊が強いといっても、わずか六人の、いや六ぴきの大コウモリを取りにがすはずはありません。やがて、さしもにはげしい戦いも終わりをつげました。洞くつ内の広い場所に、あのぶきみな羽の上から、ぐるぐる巻きにしばられた六ぴきの怪盗が、つかれはててぐったりよこたわっていました。
 東京全都を、いや日本全国をあれほどさわがした凶賊二十面相も、ついに悪運のつきるときがきたのです。いつの世にも邪悪(じゃあく)は正義の敵ではありません。悪いやつは、かならずほろびるときがくるのです。
 二十面相の大コウモリのまわりには、警官隊と少年探偵団員とが輪を作って、懐中電灯の光を、そのみにくい姿の上に投げかけていました。大任をはたした明智探偵は、いま二十面相の首からぬがしたばかりの大きなコウモリの頭部を手に持って、むきだしになった賊の顔をのぞきこんでいます。
 それはじつに異様な光景でした。ぐるぐる巻きにしばられた大コウモリの胴体(どうたい)から、あの老猟師に変装したままの二十面相の首がはえているのです。人面獣心(じんめんじゅうしん)ということばがありますが、今こうして洞くつの中によこたわっている二十面相こそ、心も形も、世にもおそろしい人面獣心なのでした。
「明智君、やっぱりきみのほうがえらかったね。おれは負けた。きょうこそほんとうにおれはきみの前に頭をさげるよ。」
 つかれはてて、青ざめた二十面相の顔が、苦しげにゆがんで、細い悲しいしわがれ声で、そんなことをつぶやきながら、じっと明智探偵の顔を見あげました。
「先生、先生は、このあいだ池尻の洋館で、ぼくたちにお約束なさいましたね。一ヵ月以内にきっと二十面相をつかまえてみせるって、あのお約束が、こんなに早く実現されようなんて、ぼく、思いもよりませんでした。」小泉信雄君が、少年たちのうしろから、名探偵をたたえるように、ほがらかなちょうしで言いました。
「そうだ。先生は約束をおはたしになったのだ。諸君、先生のばんざいをとなえようじゃないか。」それは快活な桂正一君の声であった。
「明智先生、ばんざあーい。」
「小林団長、ばんざあーい。」
 洞くつもやぶれんばかりのばんざいの声は、四ほうの岩にこだまして、どこからともなく、ばんざあーい、ばんざあーいと、くりかえし、くりかえし、一同の耳にひびいてくるのでした。

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