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妖怪博士-要饭的少年

时间: 2021-10-25    进入日语论坛
核心提示:ふたり探偵 相川泰二少年がかどわかされ、泰二君のおとうさまのたいせつな秘密書類がぬすみさられたうえに、こんどは泰二君の学
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乞食少年


それからしばらくたって、明智探偵と殿村探偵とは、相前後して、東洋製作会社の門を出ました。
殿村は別れのあいさつをするでもなく、ぶあいそうな、敵意にもえた目で、ジロリと明智をにらんでおいて、例のまがりくねったステッキをつきながら、からだを二つに折るようにして、ヨチヨチと歩いていきます。
すると、どこに、かくれていたのか、ひとりの乞食の子どもが、石門の中からヒョッコリ姿をあらわしました。のびほうだいにのびた髪の毛、すすをぬったように黒くよごれた顔、ボロボロにさけやぶれた洋服、十四、五歳ほどの、見るもきたならしい乞食少年です。
乞食は門の外へ出ますと、まだそこに立って、殿村のうしろ姿を見送っていた明智探偵を、ヒョイと見あげました。明智のほうでも乞食の顔を見ました。そして、ふたりの目と目がぶっつかりますと、明智も乞食少年も、なぜか意味ありげにニッコリと笑いました。おや、明智探偵は、こんなきたない乞食と、知りあいなのでしょうか。知りあいでなくて、あんなしたしそうな笑顔を見せるはずはないのですが。
しかし、乞食少年は、べつにものをいうでもなく、そのまま、殿村のあとを追うように立ちさっていきました。つえを力に背中をまるくして、ヨチヨチと歩くせむし探偵、その少しうしろから、おともでもするようについていく乞食の小僧、ふたりの姿は、まるで奇妙な親子のように見えました。
明智探偵は事務所に帰りますと、そのまま階下の洋室にとじこもって、のんきらしく読書をはじめました。べつに捜索のために外出するようすもないのです。
夕食をすませてからも、やっぱり同じ部屋にとじこもったまま、こんどは机の上に紙をひろげて、むずかしい高等数学の計算をはじめました。これは明智の一つの道楽で、ひまでこまるときにはいつも、ふつうの人には頭のいたくなるような、数学の問題をといて楽しむのがくせでした。みょうな道楽もあればあるものです。しかし、そんなのんきなまねをしていいのでしょうか。三日のうちに犯人を発見するという約束ではありませんか。相手の殿村は、今ごろきっと、ひじょうな意気ごみで、活動しているにちがいありません。それに明智のほうでは、そのたいせつな時間を、事件とはなんの関係もない数学の計算をして、まったくむだについやしているのです。いったい明智は何を考えているのでしょう。
ところが、その夜八時ごろになって、みょうなことがおこりました。数学の計算にむちゅうになっている明智の部屋へ、窓からしのびこんだものがあるのです。窓の外の、まっくらに木のしげった庭に、人の影が動いたかと思うと、何者かが、窓ガラスにピッタリ顔をあてて、部屋の中をのぞいているようすでしたが、やがて、そろそろと窓がひらかれ、ひとりのきたならしい乞食少年が、そこから、室内へはいりこんできたではありませんか。
ああ、あいつです。昼間、殿村探偵のあとを追っていった、あの乞食少年です。明智探偵の部屋へしのびこんで、いったい何をするつもりなのでしょう。もしかしたら、殿村の命をうけて、明智に危害をくわえるために、やってきたのではありますまいか。しかし、明智探偵ともあろうものが、いくら計算にねっちゅうしていたからといって、窓がひらき、人がしのびこんだのを気づかぬはずはありません。乞食少年が窓を乗りこして、そこに立ったとき、探偵は机の上からヒョイと顔をあげて、そのほうをふりかえりました。
明智は乞食少年を見て、アッとおどろいたでしょうか。また、乞食少年は探偵に発見されて、ギョッとして逃げだしたでしょうか。いやいや、けっしてそうではなかったのです。じつにふしぎなことには、探偵も乞食少年も、少しもおどろくようすはなく、おたがいに顔見あわせて、ニコニコと笑いだしたのです。
それから、ますますみょうなことがおこりました。乞食少年はなんのえんりょもなく、ツカツカと明智の机のそばに進みよったかと思うと、探偵の耳に口をあてて、何かしらボソボソとささやきはじめたのです。そして、長いあいだささやいてから、顔をあげて、またニッコリと笑いました。
明智探偵は乞食少年のことばを、しきりにうなずきながら聞いておりましたが、聞きおわりますと、無言のまま、右手をあげて、みょうなあいずをしました。すると、乞食少年は、だまって机のそばからしりぞき、もとの窓にかけよって、ヒラリと外のやみへ姿を消してしまいました。
こうして、捜査第一日を、明智探偵は自分の部屋にとじこもったまま、何をするでもなくすごしましたが、第二日めもまったく同じことがつづいたのです。探偵は一歩も外出しないで、あいかわらず、さものんきそうに、数学の問題にむちゅうになっていました。たいくつでしかたがないといわぬばかりです。
夜になりますと、時間もちょうど八時ごろ、ゆうべと寸分たがわぬことがおこりました。れいの乞食少年が窓からしのびこんできて、ボソボソと探偵の耳に、なにごとかをささやき、そして、また窓から立ちさってしまったのです。
読者諸君、これはいったい何を意味するのでしょうか。明智探偵は殿村との競争にかぶとをぬいで、捜索を断念してしまったのでしょうか。まさかそんなことはありますまい。とすると、明智が一歩も外出しなかったのは、なぜでしょう。もしかしたら、明智は、何か奇想天外の手段によって、競争相手の殿村をアッといわせるつもりかもしれません。では、それはいったい、どんな手段なのでしょう。
また、あの奇妙な乞食少年は、そもそも何者だったのでしょう。見るもむさくるしい乞食のくせに、明智の耳に口をつけんばかりにして、ボソボソとないしょ話をするなんて、じつに奇怪せんばんな話ではありませんか。

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