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妖怪博士-怪屋之怪

时间: 2021-10-25    进入日语论坛
核心提示:怪屋(かいおく)の怪 いよいよ約束の三日めがきました。相川技師長は、ふたりの探偵のどちらが先に吉報をもたらしてくれるかと、
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怪屋(かいおく)の怪


 いよいよ約束の三日めがきました。相川技師長は、ふたりの探偵のどちらが先に吉報をもたらしてくれるかと、首を長くして待っていましたが、待っても待っても、なんの知らせもなく、とうとう日が暮れてしまいました。
 あんなに約束をしておきながら、やっぱりだめだったのかと、ほとんどあきらめて帰宅の用意をしているところへ、ひとりの給仕が、名刺を持ってとんできました。殿村弘三がたずねてきたのです。
 さっそく応接室に通して、面会しますと、殿村は相川氏の顔を見るなり、さもとくいげにいうのです。
「お約束のとおり、とうとう賊の本拠をつきとめました。明智小五郎はまだやってこないでしょうな。それごらんなさい。この勝負はわしのかちじゃ。では、あんたもいっしょに来てくださらんか。途中で警視庁へ寄って、係りの刑事たちを同道して、それからいよいよ賊の本拠へ乗りこみますのじゃ。」
「おお、そうでしたか。ありがとう。もししゅびよく書類を取りもどし、子どもをさがしだすことができたら、こんなうれしいことはありません。で、その賊の本拠というのは、いったいどこにあるのですか。」
 相川氏は報告に、相好をくずしてたずねるのです。
「いや、それは今にわかります。壁に耳ありじゃ。うかつにしゃべることはできません。なんにしても、わしと同道してくださればよろしいのじゃ。」
 そこで、相川氏も深くは問わず、まだいのこっていた重役にこのことを伝えておいて、会社の自動車に殿村と同乗し、警視庁へと急がせました。
 警視庁には、おりよく、この事件担当の中村(なかむら)捜査係長もいあわせ、殿村の報告を聞きますと、ともかくその真偽をたしかめてみようということに一決して、部下の刑事数名を引きつれ、二台の自動車に分乗して、いよいよ賊の本拠をおそうことになりました。
 殿村のさしずによって、自動車がとめられたのは、麻布の六本木の、とあるさびしい屋敷町でしたが、一同はそこで車をおり、殿村のあとにしたがって、暗い町を半キロほども歩きますと、赤れんがの塀にかこまれた、古風な洋館の前に出ました。読者諸君は、よくごぞんじの怪人蛭田博士の邸宅です。
「みなさん、ここが犯人のかくれがです。しずかにしてください。相手にさとられてはなんにもならん。ところで、犯人が逃げださぬように、手分けをして、出入口をかためていただきたいのじゃが。」
 殿村のことばに、中村係長は刑事たちに命じて、洋館の表口と裏口を見はらせることにしました。
「では、わしたち三人だけで、ひとつ案内をこうてみましょう。仕儀(しぎ)によっては、戸を()やぶってもふみこまねばならぬが、最初は、まずおだやかにあたってみるのがよろしい。」
 そこで、殿村と捜査係長と相川技師長の三人が、しずかに門内にはいっていきました。
 ところが、洋館の玄関まで行ってみますと、みょうなことには、その入り口のとびらが、ひらいたままになっていて、家の中には電灯の光もなく、まるであき家のような感じなのです。
「おや、おかしいぞ。こんなはずはないのじゃが。」殿村探偵が、背中をまるくして、小首をかたむけました。
「犯人は、目ぼしをつけられたと知って、逃げてしまったのじゃないか。」捜査係長が、ささやき声でいいます。
「いや、そんなはずはない。わしはけっして相手にさとられるようなヘマなことはしておりません。ともかく中へはいってみようじゃありませんか。」殿村はそういったまま、ツカツカと洋館の中へはいっていきましたが、やがて、壁のスイッチをさがしあてたとみえ、廊下の電灯がパッと点じられました。
「こちらへ。この廊下の奥に犯人の書斎があるはずです。ひとつそこをさがしてみましょう。」
 殿村はこの家のようすは何もかもこころえているらしく、先に立って廊下を奥へ奥へと進んでいき、ふたりを例の書斎へと案内しました。ところが、書斎へはいってみても、そこもガランとして、人のけはいもないのです。
「おかしいぞ。じゃあ、やっぱり風をくらって逃げたのかな。しかし、まださがす場所があります。このいえには地下室があるのです。」殿村はいいながら、書斎の大机の上にあった燭台のろうそくに火をつけ、それを持って、正面の書だなの前に近づき、たなの中段から二、三冊の洋書をぬきとって、そのすきまへ手を入れ、何かしたかと思うと、ふしぎ、ふしぎ、書だなの一部が、まるでとびらのように、音もなくひらいて、その奥に秘密部屋があることがわかってきました。
 読者諸君は、この書だなのしかけを、よくごぞんじですが、はじめて見る相川氏と中村係長は、あまりのふしぎさに、あっけにとられてしまいました。そして、殿村探偵が、よくここまでしらべたものだと、すっかり感心してしまいました。
「この奥に、地下室へおりる階段がありますのじゃ。」殿村はとくいらしく説明しながら、ろうそくをかざして先に立ち、読者諸君もご承知の衣装部屋とでもいうような密室を通りすぎて、せまい階段を、おりていきます。
 まがりくねったつえをついて、背中をまるくして、エッチラ、オッチラおりていくようすは、この陰気な場面によく似あって、殿村自身が、人間ではなくて、どこかよその世界から来た、魔物のように感じられるのでした。
 中村係長は、まんいちのばあいのために、用意してきたピストルを取りだし、相川氏を、うしろにかばうようにして、ゆだんなくあたりに目をくばりながら、殿村のあとにしたがいます。
 階段をおり、鉄のとびらをひらきますと、泰二少年が妖婆のために苦しめられ、大野君はじめ三人の少年がヘビ責めにあった、あのおそろしい地下室です。しかし、今はそこに人の影もなく、ただジメジメした地下室特有のにおいが、鼻をうつばかりでした。
 殿村は、ろうそくをふりてらして、その地下室のすみからすみまでしらべまわりましたが、何一つうたがわしい物もありません。人のかくれるような道具とてもないのです。
「おかしいぞ。ここはまるでからっぽじゃ。」殿村は、さも、いぶかしげにつぶやきました。
 いぶかしく思うのは、殿村ばかりではありません。読者諸君もさだめし小首をかしげていらっしゃることでしょう。泰二君と三人の少年は、いったいぜんたいどこへ雲がくれしてしまったのでしょう。それから、あのおびただしい青大将は、どこへ行ったのでしょう。ヘビのはいっていたあのたるさえも、今は影も形もないのです。
 それから、外に待たせてあった刑事たちの手を借りて、建物の二階から地下の部屋部屋を、くまなく捜索しましたが、どこにも人のけはいさえなく、この洋館は、まったくのあき家であることがたしかめられたばかりでした。
 さがしあぐねて、殿村と相川氏、中村係長の三人は、またもとの書斎へひきかえしました。そして、大机の前に立って、だまりこんだまま、たがいにまじまじと目を見かわしました。
「殿村さん、結局、われわれは、犯人の引っこしをしたあとへ、ものものしくふみこんだというわけですね。」捜査係長が、今夜、相川氏から紹介されたばかりの、奇怪なせむし探偵を、うたがわしげにジロジロながめながら、なじるようにいいました。
「いや、そんなわけはない。犯人はたしかに、この建物の中にいるはずです。犯人ばかりではない。れいの書類も、子どもたちも、ちゃんとここにいるはずです。」殿村は気でもくるったような目で、キョロキョロとあたりを見まわしながら、つぶやくのです。
「しかし、だれもいないじゃありませんか。きみはまださがしかたがたりないとでもいうのですか。」
「待ってください。これには秘密がある。わしは四人の子どもたちが、すぐ目の前にいるような気がするのです。しかも、それを見つけだすことができないのです。」
 殿村は、例のステッキを、コトコトいわせながら、部屋の中を、行ったり来たり、忙しく歩きはじめました。
 毛虫のような太いまゆの下に、ぶきみにするどい目がらんらんとかがやいています。くちびるからとびだしたそっ歯の間に、プツプツとあわをふいて、何かしきりとつぶやいています。心を一点に集中して、なにごとかを考えだそうと、思っているようすです。
 しばらくそうしているうちに、殿村の足がピッタリと止まりました。そして、「そうじゃ、そうにちがいない。わしはなんというばか者だ。そんなことがわからないなんて。」と、みょうなひとりごとをしたかと思うと、部屋の四すみに立ててある石膏像の一つ、読者諸君もご承知のソフォクレスの像の前に、ツカツカと進みより、いきなりステッキをふりあげて、その石膏像の肩を、めちゃくちゃになぐりはじめました。
 ギリシャの大詩人ソフォクレスの像は、ユラユラとゆれて、まずその右腕が、つけ根から折れてこなごなにくだけ散り、その破片が、せむし探偵の腕や背中に、雪のように降りかかるのでした。殿村探偵は気でもちがったのでしょうか。それとも、このとっぴな行動には、何か深いわけでもあったのでしょうか。

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