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妖怪博士-会变戏法的上衣

时间: 2021-10-25    进入日语论坛
核心提示:魔法の上着 四人の老練(ろうれん)な刑事が、蛭田博士と称する怪青年のなわじりをとって、赤れんがの家の玄関を立ちいでました。
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魔法の上着


 四人の老練(ろうれん)な刑事が、蛭田博士と称する怪青年のなわじりをとって、赤れんがの家の玄関を立ちいでました。悪人はしおしおとうなだれて、抵抗する元気など、どこにもなさそうです。たとえ抵抗しようとしても、後ろ手にしばりあげられているうえ、四人のくっきょうな刑事がつきそっているのですから、どうすることもできはしません。
 明智探偵、中村係長、相川技師長、それから小林君はじめ四人の少年は、まだ書斎にいのこり、新聞記者にとりかこまれ、質問ぜめにあっていました。
 明智探偵は虫が知らすとでもいうのか、引かれていった蛭田博士のことが、なんとなく心配になって気が気ではないのですが、新聞記者というものは、記事をとるためには、戦争でもするような意気ごみですから、その執念(しゅうねん)ぶかいかこみを切りぬけることは、なかなかむずかしいのです。
 それに、中村係長も、深く部下を信じていて、あの四人のものにまかせておけば、まんいちにも、まちがいなどおこるはずはないと、うけあったものですから、用心ぶかい明智も、つい、心をゆるしていたのです。
 ところが、そのちょっとしたゆだんから、じつに取りかえしのつかぬ一大事をひきおこしてしまいました。どんな強い刑事が、何人いたところで、それを防ぐことはできなかったのです。それは力の争いではなくて、知恵の争いだったからです。四人の老練な刑事の知恵を一つに合わせても、とうてい悪人の悪知恵にはおよばなかったのです。
 四人の刑事が、後ろ手にしばった犯人をひったてて、門を出るまでは、なんのかわったこともありませんでした。門の外は、大きな邸宅ばかりのさびしい町です。ところどころに、街灯があわい光を投げているばかり、それにもう夜もふけているので、人通りはまったくなく、まるで遠いいなかのほうへでも行ったような、暗さ静けさです。
 その暗い道路に、一だいの自動車がとまっています。警視庁の自動車です。四人の刑事は、犯人をそれに乗せて、ひとまず警視庁の留置所へ、連れていくわけなのです。
 ところが、そうして二、三歩門をはなれたときでした。犯人のなわじりをにぎっていた刑事は、とつぜん、腕をグンと引っぱられるような感じを受けました。
「おや、逃げる気だな。ちくしょう、逃がすものか。」とっさにそう考えて、いよいよ腕に力をこめ、ウンと足をふみしめたのですが、そのひょうしに、刑事はドッとうしろへしりもちをついてしまいました。
 アッと思うまに、もう犯人は風のように、かけだしていました。
 いっしゅんかん、刑事たちは何がなんだかわけがわかりませんでした。たおれた刑事はちゃんと、なわをにぎっているのです。それに、とくべつのしばり方がしてあるので、犯人が、なわをぬけることなど思いもよりません。いや、げんに犯人の腕はちゃんとしばられたまま、なわの先についているではありませんか。いったいこれはどうしたというのでしょう。犯人の上着だけが、後ろ手にしばられた形で、そこにとりのこされているのです。
 犯人はわれとわが腕をきりおとして逃げさったのでしょうか。まさか、そんなばかばかしいことができるはずはありません。でも刑事たちは、犯人の両腕が、肩のところからスッポリぬけてしまったような気がしたのです。その腕が手もとに残っているのが、何よりのしょうこではありませんか。
 またしても魔術です。まるでお化けにでもあったような、うすきみの悪い感じです。
 しかし、いくらふしぎだからといって、逃げだす犯人を追わぬわけにはいきません。三人の刑事たちはたおれた同僚をあとに残して、いきなりかけだしました。
 とりのこされた刑事は、まだしりもちをついたまま、きみ悪そうになわを引きよせて、その腕を手にとり、門灯の光にかざしてみました。
 たしかに人間の手です。指の形もちゃんとそろっていますし、色といい、弾力といい、さいぜん刑事がなわをかけたその手首にちがいありません。
 しかし、このつめたさはどうでしょう。たとえ、切りおとした腕にもせよ、たった二秒か三秒のあいだに、こんなにひえきってしまうはずがありません。
 刑事は、その腕の切り口に、もしや血が流れてはいやしないかと、こわごわ洋服の肩へ手を入れてみましたが、そのようすもありません。ただツルツルした丸いものが、指にふれるばかりです。
「おや、へんだぞ。」刑事はふとあることに気づいて、急いで立ちあがると、しばられたままの両の手首を、近々と門灯にさしつけ、目をこらしてながめました。
 すると、どうでしょう。おどろいたことには、それはたくみにこしらえたゴム製の腕だったのです。指の形から色合いから、ほんものそっくりにできている義手だったのです。
 ああ、あいつはなんという手品使いでしょう。そでの中に義手をぬいつけた上着を着て、わざとそのにせの腕をしばらせ、ゆだんを見すまして、パッと上着をぬぎすて、義手だけを残して逃げさったのです。
 あいつが電灯を消した意味も、これではっきりわかってきました。あいつは部屋の出入り口に刑事が見はっていることは、とっくに感づいていたのです。ですから、電灯を消したのは、部屋から逃げるためではなくて、この義手のついた魔法の上着を身につけるためだったのです。そして、わざと変装を明智に見やぶらせ、あのほの暗い部屋の中で、にせの手首をしばらせるためだったのです。そう考えると、スイッチのとっ手を引きちぎって、きゅうに電灯がつかぬ用心をしたわけも、よくわかってくるではありませんか。
 刑事はそれをさとると、くやしいよりも何よりも、あまりのことにあいた口がふさがりませんでした。
 いっぽう三人の刑事は、ふしぎなできごとに気をうばわれて、二秒か三秒のあいだ、ためらっていたものですから、いくらがんばってみても、きゅうに犯人に追いつくことはできません。つい十五、六メートル向こうに、白いワイシャツの背中をながめながら、そのへだたりが、なかなかちぢまらないのです。
 これがにぎやかな町ならば、たちまち弥次馬があらわれて、犯人の逃げ道をふさいでくれるのでしょうが、このさびしい屋敷町では、いくらわめいたところで、なんのかいもありません。
 三人は、ただ死にものぐるいに追っかけるほかはないのです。犯人が町かどをまがるたびに、姿を見うしないはしないかと、ビクビクしながら、息のつづくかぎり走りました。
 そうして、三つほど町かどをまがりますと、そこは、両がわに高いコンクリート塀が百メートル以上もつづいている、ことさらにさびしい通りでしたが、刑事たちは、とうとうそこで、犯人を見うしなってしまいました。
「おや、どこへ行ったのだ。たしかにここをまがったはずだが。」
「おかしいね。両がわは高い塀で、かくれるところなんかありはしない。」
「おい、見たまえ。あすこに火の番の小屋があるじゃないか。だれかいるようだ。犯人を見たかもしれないぜ。聞いてみよう。」三人は息を切らして、そんなことを言いながら、火の番小屋に近づきました。
「おい、だれかいないかね。ぼくたちは警察のものだが、今この前を走っていったやつはいないかね。ワイシャツ一枚の男だ。」大声でたずねますと、中から、寝ぼけたようなじいさんの声が聞こえました。
「へ、なんですって? 何かあったんですか。」そして、小屋のすりガラス戸を、ガラガラとひらき、うすぎたないじいさんが、ノロノロと外に出ました。
 見れば、古びた洋服に、ぞうりばきで、頭には、やぶれたソフト帽をまぶかにかぶり、長いひものついたひょうし木を、首にさげてブラブラさせています。こんなおいぼれに、よく火の番がつとまると、おどろくようなじいさんです。
 刑事たちは舌打ちしながら、もう一度同じ質問をくりかえしました。
「へ、警察のだんな方ですか。そいつはね、今しがたこの前を、おそろしい勢いで走っていきましたよ。わたしゃ戸のすきまから、チラッと見たばかりですがね。たしかにワイシャツ一枚のやつでがしたよ。あっちのほうへ走っていきました。もう二、三百メートルも向こうへ行っているころですぜ。」
 刑事たちは、それを聞きますと、こんなおいぼれじいさんに、たずねたことを後悔するように、礼もいわないで、そのまま、またかけだすのでした。
 夜番のじいさんは、ぼんやりつっ立ったまま、三人のあとを見送っていましたが、刑事たちの姿が町かどに消えてしまうと、なぜかニヤニヤとみょうな笑いをもらしながら、いきなり首にさげていたひょうし木をにぎって、チョンチョンとたたきました。そして、これから町を一まわりするつもりなのでしょう。ヨチヨチと、刑事たちの走りさった反対の方角へ歩きはじめました。

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