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蛇神5-9-8

时间: 2019-03-27    进入日语论坛
核心提示:     8 妻だと? 聖二は驚きのあまり、半身を起こすと、首を巡らして女の顔を見ようとした。 すると、ミカヤと名乗った
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      8
 
 妻だと?
 聖二は驚きのあまり、半身を起こすと、首を巡らして女の顔を見ようとした。
 すると、ミカヤと名乗った女は、それを待ち受けていたように、首に両腕を回して引き寄せ、自分の唇を男の口に猛然と押し付けてきた。
「……や、やめろ!」
 野獣が噛《か》み付くような口づけをしてくる女の顔を両手で挟んでなんとか引きはがすと、聖二は信じられないものでも見るように、目の前の女の顔を凝視した。
 カーテンの僅《わず》かに開いた窓から差し込む月明かりを受けて、女の顔が闇の中から朧《おぼろ》げに浮かび上がっていた。
 日美香の顔をした日美香ではない女。
 そんな女がそこにいた。
 それは母の緋佐子でもなかった。
 全く別の女だった。
 布団の上に美しい野獣のように四つん這《ば》いになり、長い髪を振り乱し、目尻《めじり》のあがった双の目を歓喜とも怒りともつかぬ光でらんらんと燃え上がらせている牝豹《めひよう》のような女。日美香より遥《はる》かに野性的で生命力に溢《あふ》れ、奔放な表情をした若い女がそこにいた。
「なぜわたしを拒む? 夜毎|睦《むつ》み合った仲なのに、子までなした仲なのに」
 ミカヤと名乗る女は叫ぶように言うと、愕然《がくぜん》として声も出ない有り様の男の胸を両手でどんとついて仰向けに押し倒すと、その上に馬乗りになって、また力いっぱい手足を使って抱きついてきた。
 白い大蛇が絡み付くように。
「ああ、嬉しい。やっとあなたと会えた。この長い長い年月、あなたの母となり姉となり妹となり、こうしてずっとおそばについてきたのに、一度も妻としては巡り会えなかった。それが今、ようやくこうして」
 そう口走って、頬擦りと口づけを狂ったように繰り返す。
「……お、おまえも転生者なのか?」
 女というより、まるで野獣にのしかかられているようだった。その野獣の抱擁をなんとか逃れようともがきながら、聖二は聞いた。
 しかし、食らいつくような口づけを繰り返す女の熱く甘いフイゴのような息に触れているうちに、現代人ではとても考えられないような荒々しいその愛撫《あいぶ》に身をまかせているうちに、自分の中から抵抗する力がだんだん弱まってくるのを感じた。
 それどころか……。
 女の抱擁に反応するように、久しく忘れていた猛々しい牡の本能にも似た熱い疼《うず》きが身体の奥から徐々に蘇《よみがえ》ってくるのを感じた。
 あと五分、こんなことが続いたら、自分も一匹の野獣と化してしまいそうだ……。
 それを喋《しやべ》ることでなんとか踏み堪えようとしていた。
「そうだ。御山の頂上で、光る蛇を見てから、あの光る蛇のまばゆい青紫の光を全身に浴びたときから、死なない身体になった。いや、死なない身体ではない。死なないのは魂だ」
 女は言った。
「光る蛇……?」
「わたしたち部族が古くから崇《あが》めてきた巨大な蛇……蛇に似たものだ。何重にもとぐろを巻いて天にも届くほど巨大な螺旋《らせん》の姿をした……」
「御山というのは鏡山のことか?」
「違う。大和の御山のことだ」
「……三輪山《みわやま》のことか?」
「そう。今はそう呼ばれている。光る巨大な蛇が降り立ったあの御山だ。あの日、あなたとわたしは御山の頂上まで狩りに出かけて、あの青紫に光る巨大な蛇に出くわした。二人でその光を浴びた。あれが御山に人間が住み着く遥か昔から住み続けていたものなのか、それとも、どこか遠い空の彼方《かなた》から来たものなのかは知らない。兄のナガスネヒコたちが少し遅れて頂上に辿《たど》りついたときにはあれはもうそこにはいなかった。跡形もなかった」
 兄のナガスネヒコ……。
 さきほど、地震が起きたとき、このミカヤと名乗った女は、「イワレヒコの軍」とか口走った。
 ということは……。
 聖二ははっとしたように目を見開いた。
 思い出したのだ。
 といっても、転生者の記憶として思い出したのではない。どこかでミカヤという名前を見た記憶があった。それを思い出した。どこで見たのか。
 家伝書の冒頭の方だ。
 神祖ニギハヤヒのことを記述した箇所に、確か、その神妻の名がミカヤヒメと……。
 この女がミカヤヒメだとしたら、自分は……。
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