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松山着18時15分の死者2-8

时间: 2019-04-27    进入日语论坛
核心提示: 電話は、一日の捜査結果を総括する会議が、間もなく終わろうとするところへかかってきた。横浜へ出張した捜査員からだった。 
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 電話は、一日の捜査結果を総括する会議が、間もなく終わろうとするところへかかってきた。横浜へ出張した捜査員からだった。
 今朝、松山発十時三十分のL特急�しおかぜ8号�で横浜へ向かった二人の刑事は、岡山から新幹線�ひかり6号�に乗り、新大阪で�ひかり348号�に乗り換えて、新横浜駅へは十七時三十四分に着いた。
 その足で、神奈川県警捜査一課に淡路警部を訪ねると、高知県警の入手した情報が先着していた。高橋美津枝の実兄一夫から聞き出した、美津枝の勤務先である。
 二人の刑事は、早速、東京都大田区|蒲田《かまた》本町にある『伊東建設』へ向かった。
 横浜からの報告電話は、その『伊東建設』の、聞き込み結果を伝えるものだった。
 二人の刑事が、JR蒲田駅近くの『伊東建設』に立ち寄ったのは、午後七時過ぎであったが、これも�月末�が幸いした。
『伊東建設』は、社員七十名足らずの中小企業だった。中小企業の月末は多忙だ。『伊東建設』は、普通なら午後五時半終業なのに、今夜は、ほとんど全社員が、残業に追われていたのである。
「報告が遅れたのは、関係者の手がすくのを待っていたためです」
 と、刑事は最初に言った。
 捜査本部では、刑事課長が電話を受けていた。
「分かった。本題に入ってくれ」
 刑事課長はメモ用紙を広げ、ボールペンを持ち直した。
「伊東建設というのは、空港や道路などの地盤を作る大手建設会社の下請けです」
 と、刑事は報告をつづけた。
「高橋美津枝さんが配属されていたのは、総務課です。ええ、就職情報誌による応募だったそうです」
 入社に際しての保証人は、土佐山田に住む兄の一夫だから、『井田マンション』の場合と同じだった。
 と、いうのは、美津枝は、大阪暮らしは長かったが、横浜、あるいは東京周辺に、親しい知人はいなかったということだろうか。
「問題はそこなんです。紹介者もなく、いわば飛び込みで入社して、まだ三ヵ月しか経っていません」
 だから、机を並べている同僚にしても、詳しいことは分かっていない、と、刑事はこたえた。
「美津枝さんは、美人だけど身の上を語ることの少ない、暗い性格だったようです」
「そうかな。明るくて、人なつこく、前向きな女性だったという聞き込みもあるのだけどね」
 と、刑事課長は、夕方美津枝の遺体を引き取って行った、長兄一夫の話を口にした。
 実兄が、妹の人柄について、うそをついているとは思えない。一方、同僚にしても、事実と異なったことを、刑事にこたえる必要はないだろう。
 と、すると、美津枝は、高知から�大阪�を経て�横浜�へくる間に、人間が変わってしまったことになる。
「殺人《ころし》の背景が、その辺りにあるのは間違いないね。陰にいるであろう男の、動きを知りたい」
 と、刑事課長が言うと、
「入社以来、いつも沈み勝ちだった美津枝さんなのに、今回総務課長に休暇を申し出たときは、別人かと思えるほどに、明るい微笑を見せていたという話です」
 と、刑事は報告をつづけた。
 休暇願いは、八月二十九、三十、三十一日の三日間である。土佐山田の実家へ帰るというのが、表向きの理由だった。
 だが、美津枝は、実家には一切連絡を取っていない。
 同じ四国でも、土佐山田とは方向違いの松山で、レンタカーを借りているのである。
 美津枝が、総務課長に示した明るさが本物なら、彼女は松山で落ち合うことになっていた�男�に、希《のぞ》みを託していたということだろう。
 美津枝が、実兄の一夫たちに、結婚を匂わせたのは、二年前だ。松山で落ち合った男がその相手であり、二年ぶりでの�夢の実現�が、美津枝が誘い出された口実であったのかもしれない。
 男が黒い網を張っているとも知らず、美津枝は口実を信じてしまったのだろう。だからこそ、総務課長に休暇を申し出るときの表情が、思わず知らず和んでいたのに違いない。
「その相手ですが、伊東建設で、一人だけ男が浮かんできました」
 電話を伝わってくる刑事の口調が、緊張したものに変わった。それこそが、第一日目の報告の、ポイントだったのである。
「いまも言いましたように、美津枝さんは二十九日の火曜日から、会社を休んでいるわけですが、その二十九日の午前、美津枝さんあてに一本、男性から私用の電話が入りました」
「男性? しかし彼女が休んでいるのに会社へ電話をかけてきたというのでは、違うんじゃないか。松山で網を張っていた男なら、彼女の旅程を承知していなければならない」
「電話を受けた同僚の話では、男は、美津枝さんが午前中は出勤し、午後から三十一日まで休暇を取ることは知っている、と、そんな口振りだったと言います」
「電話をかけてきた目的は何だ」
「どうも、話の印象では、待ち合わせ場所を打ち合わせるための電話だったとか」
「四国で落ち合う場所のことかね。きみ、それが、松山へ現われた男だというのか」
「電話を受けた同僚は、美津枝さんが絞殺されたことを知ったとき、瞬間的にその男を思い出したと言っています」
「男の名前は、控えてあるのかね」
「高橋美津枝さんが、朝から休暇を取っているのなら結構です。男は最初はそう言い、自分を名乗ることを渋って電話を切ろうとしたそうですが」
「結局は、こたえたというのかね」
「小声で、ウラガミ、と告げたそうです」
「浦上?」
「どちらの浦上さんですか、と、尋ねると、電話は高橋さんの自宅マンションへかけ直すから結構ですと言ったとか。それでもなお、その女子社員が繰り返し質問すると、週刊誌の浦上と言えば分かるとこたえたそうです」
「週刊広場とは言わなかったのかね」
「あるいは、その同僚が聞き漏らしたのかもしれませんが、週刊誌ということばははっきり耳にしています。高橋さんはジャーナリストに知人がいるのか、と、その同僚はびっくりしたと言っています」
「二十九日の午前中と言えば、浦上はまだ東京にいたわけだな」
 刑事課長は、横浜からの報告電話が終えたとき、そんなつぶやきを口にしていた。浦上が都内からかけた電話なら、問い合わせの内容から言っても、話の筋は通ってこよう。
「その電話の男が、本当に浦上なら、話はまたこんがらがってくる」
 と、捜査一課長が腕を組むと、
「浦上が真犯人《ほんぼし》なら、一昨日のその時点で、すでに松山を犯行場所とする殺人《ころし》を意図していたわけだろ。いくら繰り返し尋ねられたからといって、本名を名乗ったりするかね」
 と、署長が疑問を呈し、別の刑事が、こうつぶやいた。
「電話なら、姿を見られませんし、証拠も残りません。で、うっかり口走ってしまうってことも、あるのではないでしょうか」
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