鬼弾は魍魎(もうりよう)の一種である。
永昌(えいしよう)郡不韋(ふい)県(雲南省)に、禁水(きんすい)と呼ばれている川がある。川には毒気があるので、十一月と十二月は渡ってもよいが、正月から十月までのあいだは渡ってはいけないとされている。もし強(し)いて渡れば病気になって死んでしまうという。
それは、毒気の水の中に悪いものがいて、形は見えないが、人の声に似た叫び声をあげ、水中から何かを吹きつけてくるからである。それが木にあたると木は折れるし、人にあたると肌が破れる。土地の人たちはこれを鬼弾と呼んでいる。
そこで、永昌郡では、管下に罪人が出ると、その者をこの川へつれて行って護岸工事をさせるのだが、みなこの鬼弾に何かを吹きつけられて肌が破れ、病気になって、十日もたたないうちに死んでしまうという。
六朝『捜神記』