広笑府
ある人が客を招いて蓮根の料理を出したが、細いところばかりで、太いところは台所に残しておいた。
「こういう詩をご存じでしょう?」
と客がいった。
「太華峰(たいかほう)頭玉井(ぎよくせい)の蓮(はす)、開花十丈藕(はすのね)船の如し。わたしはこの詩を読むたびに、藕船の如しなどというのは誇張も甚しいと思っていたのですが、今やっとほんとうだということがわかりましたよ」
「どうしてです」
と主人がきくと、客は皿の上の蓮根を指さして、
「蓮根の先はここにあるのに、太いところはまだ台所にあるのですから」