笑禅録
『論語』に孔子の飲食について記した一章があって、
「食(し)は精(しら)げたるを厭(いと)わず、膾(なます)は細きを厭わず」(飯は白米がよく、膾は細く切ったのがよい)
とある。
さて、ある道学先生が人々にいった。
「孔子の言葉を一、二句でも体得すれば、尽きざる利益を得るものである」
すると一人の若者が進み出て、一礼していった。
「わたくしは孔子の言葉を二句、深く体得しております。そのため、心はゆたかになり、体もふとりました」
「その二句というのは?」
と先生がたずねると、
「はい。食は精げたるを厭わず、膾は細きを厭わず、という二句でございます」