笑林
南方の男が都(洛陽)へ奉公に上ったところ、ある人が食べ物についての注意をして、
「出された物は何でも食べたらよいのだ。これは何ですかなどと物珍らしそうにきくんじゃないぞ」
といった。さて主人の家へ行き、門のなかへはいって行くと馬の糞があったので、さっそく食ったところ、臭いにおいがした。さらになかへはいって行くと、古草履(ぞうり)が捨ててあったので、また食ってみたが、とても喉を通らない。そこで連れの者をふりかえって、
「やめた! 人のいうことをそっくり信用することはできん」
といった。その後、高官のところへ行ったところ、ご馳走が出された。彼はそれを見まわしながらつぶやいた。
「さっきの食い物の親玉だな。まあ、食わないことにしよう」